■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「万物の個別の状態は唯一者のうちに存し、まさにそれから多様に展開すると見る時、
その人はブラフマンに達する。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第30節)
■逐語訳
この世界に現れるあらゆる個別の存在・状態は、
一なる存在(唯一者=ブラフマン)から発し、そこに帰している――
このように「多の中に一を見る者」は、
真理そのもの(ブラフマン)に至るのである。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
個別の状態(ヴィクーラーニ) | 多様な存在、形、名前、動き、特性。 |
唯一者(エーカム) | 絶対的実在、神、ブラフマン。変化せず遍在する「一なるもの」。 |
展開(ヴィスターラ) | 一つのものから多くが流れ出ること。創造的発現。 |
見る(パッシャティ) | 単なる目視でなく、洞察し、体得すること。 |
ブラフマンに達する(ブラフマ・サンスタム) | 絶対実在と一体になる。悟りの完成。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
この節は、「世界のすべての個別的なものは、本質的に一つの源から生じた」と見抜ける人こそが、
ブラフマン(永遠の実在)に到達するのだと語ります。
外見は多種多様に見えても、本質は一つであり、すべてがその顕れにすぎない――
その理解が、人間の意識を宇宙の真理と一体化させるのです。
■解釈と現代的意義
この節は、「本質的統一性」への目覚めを教えています。
世界は無限の多様性に満ちているように見えても、その根源は一つであり、
私たちは見かけに惑わされずに、その共通した「一の存在(本質)」を見抜く必要があります。
これは、分断や差別、エゴ的対立から自由になるための智慧です。
■ビジネスにおける解釈と適用
視点 | 解釈と応用例 |
---|---|
多様性と統一の両立 | 組織の多様な人材・部門・意見も、共通の使命や価値から展開していると見れば、協働が進む。 |
マーケティング視点 | 顧客のニーズは多様に見えても、根底には「安心したい」「成長したい」など共通の本質的欲求がある。 |
プロジェクト管理 | 無数のタスクや課題があっても、それらが「一つの目的」から派生していると理解すれば、整理と統率が可能になる。 |
リーダーの視点 | すべての現象の奥にある「共通の原理・価値・善性」を観ることで、ぶれない判断軸を持てる。 |
■心得まとめ
「万象は一に根ざし、一は万象となる」
『バガヴァッド・ギーター』は、多様な現象の背後に一つの真理があると説きます。
すべての存在は唯一の源(ブラフマン)から生まれた顕れにすぎず、
それを見抜ける人こそが、真の実在と一体になる道に到達する。
この「一を観る目」は、混沌の中に調和を見出し、分断の中に共通性を見出すための根本的な智慧であり、
ビジネスにも人生にも貫かれる、最も重要な洞察の一つです。
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