■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「しかるに、他の人々は、このように知らないで、他者(師など)から聞いて〔自己を〕念想する。
聴聞に専念する彼らもまた、死を超越する。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第25節)
■逐語訳
一部の人々は、瞑想・識別・行為のいずれの方法も知らず、
ただ師や聖典から話を聞き、それに心を集中させて信じることによって、自己(アートマン)を想起する。
こうした「聴聞(シュラヴァナ)」に専心する人々もまた、輪廻を超え、死の束縛を超越することができる。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
知らないで(アニャーナ) | 自らの力で理論や実践を通じて認識していない状態。 |
聴聞(シュラヴァナ) | 師の教えや聖典を注意深く聴き、心に受け入れる修行。 |
念想する(チャイントヤンティ) | 聴いた内容を深く思い浮かべ、心に留めること。 |
死を超越する(ムリトュム・ティルヤンティ) | 生死の輪廻を超え、永遠の存在に目覚めること。解脱を意味する。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
自分で瞑想したり、哲学を学んだり、行動で悟りを得ることができない人であっても、
師の教えを真摯に聴き、心でそれを深く思い、実践しようと努めるならば、
その人もまた、輪廻を超えた解脱に至ると、クリシュナは説いている。
「聴くことに徹する誠実な態度」こそが、最初の光の扉を開く鍵となる。
■解釈と現代的意義
この節は、「知的能力や修行の深さが足りなくても、誠実な信と聴く姿勢があれば、悟りに達することができる」という慈悲深い教えです。
実践や理解がまだ及ばなくても、師・信頼できる人・学びの場に心を開いて聴くこと――それだけで、心は変容しはじめます。
つまり、始まりは「知っていること」ではなく、「聴く意志」でよいのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
視点 | 解釈と応用例 |
---|---|
学びの姿勢 | 専門知識がなくても、まず「聞く姿勢」から入ることで、成長の扉は開かれる。 |
傾聴の力 | 聴くことそのものが、他者の知恵と世界観を自分に取り入れる最初のステップ。 |
部下の育成 | 経験の少ないメンバーでも、素直に先人の話を聴き、心に留めれば、成長と変化は始まる。 |
謙虚なマインドセット | 「わからないから学ぶ」「学ぶために聴く」という姿勢が、自己革新の土壌を作る。 |
■心得まとめ
「わからなくても、聴こうとする心が、魂を開く」
『バガヴァッド・ギーター』は、知識や修行の深さを問わず、
ただ師の言葉を信じて聴こうとする心が、死と輪廻を超える道を切り拓くと説きます。
現代においても、「学びの入口」は知識量ではなく、素直な耳と開かれた心にあります。
聞く姿勢を失わない者は、いつかきっと真理に至る――それが、この節の静かな力強いメッセージです。
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