MENU

私を形づくるものを知る――構造を知れば、執着は外れる


■引用原文(日本語訳)

聖バガヴァットは告げた。
「〔五種の〕元素、自我意識、思惟機能、非顕現のもの(プラクリティ)、十の感官と一〔思考〕器官、五の感官の対象、」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第5節)


■逐語訳

五大元素(地・水・火・風・空)、我(アハンカーラ=自我)、思考機能(マナス)、
非顕現(プラクリティ=根本自然)、
十の感官(五感と五つの作用器官)と、一つの内的器官(ブッディ=理知)、
さらに五つの感官の対象(音・触・形・味・香)――これらが「土地(身体)」の構成要素である。


■用語解説

用語意味
五元素(パンチャ・マハーブータ)地(固体)、水(液体)、火(熱・エネルギー)、風(運動)、空(空間)
自我意識(アハンカーラ)「私が…」という自己感覚。エゴ、個人意識。
思惟機能(マナス)感覚情報の受信・処理・反応を司る働き。心の一部。
非顕現(プラクリティ)宇宙の根本物質。まだ形を取らない自然の原初的エネルギー。
十の感官五感(聴・触・視・味・嗅)+五つの行動器官(発話・把握・移動・排泄・生殖)
一思考器官(ブッディ)判断・分別を行う知性。個人の内面で最も高次の器官。
五感の対象音(聴覚対象)、触覚対象、形・色(視覚)、味覚、香り

■全体の現代語訳(まとめ)

神(クリシュナ)は、人間の「身体(クシェートラ)」とは単なる肉体ではなく、五元素・感覚器官・思考・知性・自我・自然の原理など、多層的な構造を持つ複合体であると説明している。これらの構成要素を理解することで、自分がそれらとは異なる“観察者”であることを見極める準備が整う。


■解釈と現代的意義

この節は、「私」と思っている存在が実は多くの構成要素の集合体であることを明らかにします。
それを一つひとつ明確に見分けることで、「私は身体でも感情でも思考でもない」という気づきが芽生えます。
現代的にいえば、「自分」という存在は、社会的役割・身体的感覚・思考パターンなどが折り重なったものにすぎず、そこに気づくことで苦しみや執着から自由になる道が開かれます。


■ビジネスにおける解釈と適用

視点解釈と応用例
セルフマネジメント感情や思考が一時的な構成要素であると理解すれば、ストレスや不安に飲まれず、冷静な判断ができる。
チーム理解人の行動も「性格」ではなく「構成要素の反応」と捉えれば、感情的にならず理性的な対話ができる。
人材育成スキルや思考様式など、個人の「構造」を見抜いて成長を促すことで、本質的な力が引き出される。
健康管理身体・感覚・精神のバランスに気づき、過剰な働き方や不自然な思考癖を見直すことができる。

■心得まとめ

「“私”を構成するものを知るとき、“私”を超える視点が生まれる」

『バガヴァッド・ギーター』は、「私」という存在が様々な要素からできており、その全体を冷静に見つめる目(観察者)こそが真の自己であると導きます。
ビジネスにおいても、「私は○○だ」という固着した自己像を手放し、変化する自分・他人・状況を俯瞰できる人こそが、柔軟で力強いリーダーとなります。
構造を知ることは、自己理解の第一歩です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次