■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「アルジュナよ、この身体は『土地』と呼ばれる。それを知る人々は、その『土地』を知る者を『土地を知る者』と呼ぶ。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第1節)
■逐語訳
クリシュナは言った:
「アルジュナよ、この身体(物質存在)は『クシェートラ(土地・場)』と呼ばれる。これを理解する人々は、その身体(クシェートラ)を認識する意識的存在を『クシェートラジュニャ(土地を知る者)』と呼ぶ。」
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
土地(クシェートラ) | 物質的な身体、経験の舞台。個人が活動する“場”としての存在。 |
土地を知る者(クシェートラジュニャ) | 自身の身体や精神を客観的に認識する「自己意識」=魂・真我(アートマン)。 |
知る(ジュニャ) | 知識により対象を理解する行為、または霊的な認識力。 |
身体(シャリーラ) | 五感・心・知性を含む物質的な存在。魂の容れ物。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、「身体」は単なる物質的存在であり、それを“認識している意識”こそが本当の自分である、と説いている。身体(クシェートラ)は行為の舞台であり、それを知る者(クシェートラジュニャ)は、自己認識を得た者=魂の目覚めた存在である。
■解釈と現代的意義
この節は、私たちが普段「自分」と思っている身体や感情は、あくまで“場”にすぎず、その場を観察し認識している意識こそが「真の自己」であることを示唆しています。
物質的な自己(外見や立場、感情)に振り回されず、それらを観察する「内なる目」を持つことで、私たちは本質的な自己理解と自由に向かうことができます。
■ビジネスにおける解釈と適用
視点 | 解釈と応用例 |
---|---|
自己理解 | 肩書・立場にとらわれず、自分がどんな「役割の舞台」にいるのかを冷静に見つめ直すことで、より柔軟かつ冷静な判断が可能になる。 |
メンタルヘルス | 感情や疲労に飲み込まれず、「それを見ている自分」がいることを意識することで、感情に距離をとるセルフマネジメントが可能になる。 |
人間関係 | 他人との摩擦において、反応する前に「自分は今どんな状態か」を見つめ直すことで、冷静で建設的な対応ができる。 |
リーダーシップ | 自分の資質や行動を客観視できるリーダーは、組織内でも信頼と尊敬を集める。 |
■心得まとめ
「自分の中に、見ている“もう一人の自分”がいる」
『バガヴァッド・ギーター』は、「私たちは身体や感情ではなく、それを見つめる意識そのものである」と説いています。
現代社会では「何を持っているか」や「どう見られるか」に囚われがちですが、本当の成長は、「自分を知ること」から始まります。
日々の忙しさの中でも、内なる観察者としての自分を忘れない――それがブレない判断力と真の自由への第一歩となるのです。
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