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■引用原文(日本語訳)
「あなただけが、自ら自己を知る。至高のプルシャよ。万物をあらしめる者、万物の主、神のうちの神、世界の主よ。」
(『バガヴァッド・ギーター』第10章 第15節)
■逐語訳(一文ずつ)
- svayam evātmanātmānaṃ vettha tvaṃ puruṣottama
→ あなただけが、自らを通して自己を知っているのです、至高のプルシャ(プルシャの中の最上)よ。 - bhūta-bhāvana bhūteśa devadeva jagat-pate
→ あらゆる存在を生み出す者よ、存在の主よ、神々の中の神よ、宇宙の支配者よ。
■用語解説
- プルシャ(puruṣa):宇宙原理・霊的存在。ここでは人格神としてのクリシュナ=ヴィシュヌを指す。
- プルショッタマ(puruṣottama):すべてのプルシャの中で最も高き存在、至高者。
- ātmanā ātmanam vettha:自らによって自己を知る。神自身が、自らの存在を完全に認識していることを意味。
- bhūta-bhāvana:万物を生み育てる者。
- bhūteśa:存在するすべての主。
- deva-deva:神の中の神。
- jagat-pate:世界の主、全宇宙の支配者。
■全体の現代語訳(まとめ)
「この宇宙において、あなた自身こそが、自らの本質を完全に知る存在です。万物を生み出し、支配し、導く主よ。あなたは、神々の中でも最も尊い神、そして世界の根源的支配者なのです。」
■解釈と現代的意義
この節では、アルジュナがクリシュナの「唯一性」「全知性」「創造者・保護者・支配者としての至高性」を全面的に認めて称えている場面です。
重要なのは、「自己を知っているのは神自身のみである」という視点です。つまり、本質的な自己認識(真我の理解)は、最も深く高次の存在にしか到達しえないというメッセージが込められています。
現代に生きる私たちにとっても、本質を知る者=ブレない指導者、強さと謙虚さを持つリーダーと読み替えることができます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
真のリーダーシップ | 自らの理念・価値観・存在意義を深く理解し、そこからすべての意思決定を行うリーダーが、組織を導く。 |
自己認識の重要性 | 自分自身の強み・弱み・立場・影響力を正しく理解することが、周囲への健全な影響力を生む。 |
権威の正当性 | 真の支配力は「肩書き」ではなく、「自己理解」と「人々の信頼」によって裏打ちされる。 |
人格と力の一致 | 知識や力を持つだけでなく、それに見合う人格と真理の理解が伴うことで、本当の尊敬が集まる。 |
■心得まとめ
「自らを知る者が、人を導く者である」
この世界を動かす力は、外からではなく、内なる自己の深い理解から生まれる。
神のように、自らの本質を理解し、それに基づいて動く者――それが真のリーダーである。
本質を知ることなしに、他者や世界を治めることはできないという教えがここにある。
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