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■引用原文(日本語訳)
アルジュナはたずねた。
「あなたは最高のブラフマンであり、最高の住処、最高の浄化具である。永遠にして神聖なプルシャである。本初の神であり、不生なる主であると、」
(『バガヴァッド・ギーター』第10章 第12節)
■逐語訳(一文ずつ)
- paraṃ brahma paraṃ dhāma
→ あなたは至高のブラフマン(究極の実在)であり、最高の住処(安らぎの根源)です。 - pavitraṃ paramaṃ bhavān
→ あなたは至高の浄化の存在であり、 - puruṣaṃ śāśvataṃ divyam
→ 永遠で、神聖なるプルシャ(霊的人格)です。 - ādi-devam ajam vibhum
→ 本初の神であり、不生の存在、遍在する主です。
■用語解説
- ブラフマン(Brahman):宇宙の根源、絶対的実在。形を持たず、すべてに満ちている真理そのもの。
- 住処(dhāma):魂の最終的な帰着点・安らぎの場。真の心の拠り所。
- 浄化具(pavitra):魂や意識を浄めるもの。存在における浄性の象徴。
- プルシャ(puruṣa):霊的自我。宇宙的な人格。行為の観照者。
- 本初の神(ādi-deva):最初にして最高の神。あらゆる神格の根源的存在。
- 不生の主(ajam vibhum):生まれず、死なず、すべてに遍在する主宰者。
■全体の現代語訳(まとめ)
アルジュナはクリシュナにこう語る――
「あなたこそが、この宇宙の根源であり、魂の最終的な安らぎであり、最も聖なる存在です。あなたは永遠で、神聖なる人格であり、この世界のはじまりに存在した最初の神、不生不滅で遍在する主なのです。」
■解釈と現代的意義
この節は、アルジュナが神(クリシュナ)の真の本質を悟り、その存在を深い確信と敬意をもって語る場面です。
彼は単に「感情的に信じる」のではなく、理性と霊性の両面から神の本質を理解し、語っているのです。
このような理解こそが、「ゆるぎない信」と「行動の源」になることを示唆しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
ビジョンの確信 | 自社や自身の理念・存在意義について、理性的にも感情的にも納得し、明確に語れる状態が、周囲に影響を与える。 |
リーダーの資質 | 本質を理解し、その価値を確信をもって発信できる者は、人を動かし、導く力を持つ。 |
意義と動機づけ | 信じるべき「何か」を明確に認識している人は、困難な時にも軸をぶらさず前進できる。 |
組織文化の育成 | メンバー一人ひとりが「自分たちが何を目指しているのか」を心から理解し、語れる文化は、強く持続的な組織を生む。 |
■心得まとめ
「真に理解したとき、信は言葉となってほとばしる」
心の奥で真理や理念を深く理解した者は、それを語るときに迷いがなく、周囲を照らす言葉になる。
その言葉は、単なる信仰や知識を超えた「確信からの発言」であり、人を導き、組織を育て、使命を力に変える。
信じるとは感じること以上に、「知っている」ことなのだ――それがアルジュナのこの節に込めた態度です。
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