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■引用原文(日本語訳)
私は熱を発する。私は雨を収めて、また送り出す。
私は不死であり、死である。有であり、非有である。
(『バガヴァッド・ギーター』第9章 第19節)
■逐語訳(一文ずつ訳す)
- 私は熱を発し、
- 私は雨を止め、また雨を降らせる。
- 私は不死(アムリタ)であり、同時に死(ムリティユ)でもある。
- 私は「有(サット)」であり、「非有(アサット)」でもある。
■用語解説
- 熱を発する(タパーミ):自然のエネルギー、太陽の熱、または苦行の象徴的意味合いも持つ。
- 雨を収め・送り出す(ヴァルシャム・ニグリフナーミ・ウツラジャーミ):自然現象を統制する超越的存在としての神。
- 不死(アムリタ):永遠の命、霊的存在、解脱を象徴。
- 死(ムリティユ):輪廻の現象、終焉の力。
- 有(サット):存在、真理、実在。
- 非有(アサット):非存在、幻影、現象世界の不確かさを象徴。
■全体の現代語訳(まとめ)
私は世界にエネルギーを与える存在であり、
天候さえも意のままに動かす。
私は永遠の命の源であり、同時に死をも司る存在である。
私は「存在」でもあり、「非存在」でもある。
あらゆる二元を統合した真の力である。
■解釈と現代的意義
この節では、神(バガヴァーン=クリシュナ)が自らを「自然界の力」と「存在の対立性」を超えた絶対的存在として語ります。
「不死と死」「有と無」「熱と雨」など、相反するものを同時に包含している存在は、現代においては「固定観念を超えた本質」の象徴とも言えます。
現実においても、「白か黒か」「成功か失敗か」という二項対立にとらわれず、そのどちらにも意味を見出し、包含する視座を持つことが求められる時代に生きています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
二極を超える思考 | 成功と失敗、利益と損失、成長と停滞を対立として捉えるのではなく、循環と統合として受け入れる。 |
リーダーの器 | 強さと優しさ、主導と傾聴を同時に持つ人物は、組織のバランスを保ち、多様性を生かす力を持つ。 |
環境の変化に対応 | 「熱」「雨」という自然変動に象徴されるように、変化を操りながらも、それに支配されない在り方が望ましい。 |
真の統治力 | 対立概念に振り回されるのではなく、それらを理解し調和させることで、人・組織・社会を導く。 |
■心得まとめ
「矛盾を抱えて、力となれ」
火を放ち、雨を止め、また与える。
死を司り、命を与える。
有であり、無でもある――それが真の力である。
人はどちらか一方に偏りたがるが、
リーダーとは両極を理解し、
その全体を調和させる存在である。
対立の先にある真理を見つめよう。
それが時代の中心を動かす「不滅の種子」となる。
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