■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「梵天の世界に至るまで、諸世界は回帰する。アルジュナよ。しかし、私に到達すれば、再生は存在しない。」
――『バガヴァッド・ギーター』第8章第16節
■逐語訳
「アルジュナよ、たとえ梵天の世界であっても、すべての世界は再び生まれ変わる運命にある。
しかし、私(至高者)に到達した者は、二度と生を受けることはない。」
■用語解説
- 梵天(ブラフマー):
宇宙創造の神であり、インド神話における最高位の存在の一つ。非常に長寿で崇高な世界の象徴だが、それでもなお有限であり、輪廻のうちにある。 - 諸世界(ローカ):
天界・地上・地獄など、さまざまな存在界。それぞれに寿命や役割があるが、すべては輪廻に属する。 - 回帰(アヴァルティナハ):
再び生まれ変わること。輪廻転生のサイクルの中にあること。 - 私に到達する(マーム・ウプェーティ):
至高の神(クリシュナ)に心を完全に向け、合一すること。これによって輪廻のサイクルを超越する。
■全体の現代語訳(まとめ)
どんなに崇高で美しい世界に生まれても、それはやがて終わりを迎え、また生まれ変わらねばならない。
だが、至高の存在である「私(神)」に至った者は、もはや再生の輪の中に入ることはない。
真の自由は、この世のどの階層にも存在せず、「私との合一」にこそある。
■解釈と現代的意義
この節は、「どんなに高次な成功や状態も、永遠ではない」ことを示しています。
つまり、たとえ「梵天の世界(神の領域)」のような偉大な地位や幸福にあっても、
それはやがて失われる運命にあり、「本当の自由」ではないということです。
現代で言えば、「成功」「地位」「名声」など、どれほど尊いものであっても、
それに執着している限り、人は常に不安と変化にさらされる――
だからこそ、「普遍の原理」に根ざすことが求められているのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
儚い成功への執着 | 売上やシェア、SNSフォロワーなど、いかに大きくても永続しない。「真の価値」に立脚する姿勢がなければ、再び苦を味わうことになる。 |
地位より原則 | どんなポジションに昇っても、それ自体がゴールではない。原理原則・志に立ち返ることで、揺らがぬ自己を築ける。 |
精神的独立 | 成功や失敗の循環に疲弊せず、「何のために働いているか」を明確に持つことで、真にブレないビジネスパーソンになれる。 |
■心得まとめ
「どんな成功も終わりを迎える。だが、真理に至れば二度と迷わぬ」
一時的な高みや、外的な成功は、人を救うものではない。
そこにしがみつく限り、また元に戻る運命にある。
だが、至高の存在・真理・使命に目覚め、それに合一した者は、
もはや生まれ変わる必要のない、「解放された人生」を歩むことができる。
ビジネスにおいても、儚い成功を追うのでなく、普遍的な価値に立脚した生き方が、最終的な勝利をもたらすのである。
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