■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「臨終において、人がいかなる状態を念じて肉体を捨てようとも、常にその状態と一体化して、まさにその状態に赴く。」
――『バガヴァッド・ギーター』第8章第6節
■逐語訳
「死のとき、人がどのような存在や状態を思いながら身体を離れようとも、
彼は常にその状態と一体となり、まさにそれに向かって進んでいく。」
■用語解説
- 臨終(プラヤーナ・カーレ):
死の瞬間。魂が肉体から離れるタイミング。 - いかなる状態(ヤム・ヤム・ヴァー・バーヴァム):
その人が心に思い描く対象、あるいは精神的状態、感情や価値観、信念など。 - 念じて(スムラン):
強く心に思い浮かべる。意識を集中すること。 - 一体化して(サダー・タッド・バーヴァ・バーヴィター):
常にその思念の内容と同化し、思考・感情・信念と存在が融合している状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、「死の瞬間に何を思っているか」によって、次に魂が向かう世界や状態が決まるのだと説く。
そしてそれは、単なる一時的な思考ではなく、生前に繰り返し念じ、慣れ親しみ、心に根づいた思念が、魂を導く力になるということを意味している。
■解釈と現代的意義
この節は、「意識の方向性が人生と死を決定づける」という核心的な真理を提示している。
特に臨終という最も重大な場面で、それまでに「慣れ親しんだ思念」がその人を導く。
それは、すでに“その人の生き方”そのものである。
現代に生きる私たちにとっても、
・日々何を考え、
・何に心を傾け、
・どのような価値観を抱いて生きているか
が、そのまま人生の質を決め、さらには「死に際しての意識」も規定してしまう。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
思考の習慣化 | 普段からポジティブなビジョンや使命を思い描いている人は、困難なときにもその方向に引き寄せられる。 |
終わりを意識した日常 | プロジェクト終了・転職・退職など「去るときの姿」を意識することで、今のふるまいに一貫性と品格が宿る。 |
ビジョンの内面化 | 自社理念や自分の目標が表面的なものではなく、心に深く根づいているかどうかが、行動の質を決める。 |
■心得まとめ
「あなたが日々思うことが、最後の瞬間にあなたを導く」
死の瞬間に思うことが、魂の次なる行き先を決める――
それは、普段の思考・感情・信念がそのまま「最終選択」に作用するという意味である。
ビジネスにおいても、「どうありたいか」「何を大切にするか」を繰り返し意識することで、
困難な時にも“自分らしい決断”ができるようになる。
最期の思いは、日々の思いの延長線上にある。だからこそ、いまの一瞬が尊い。
コメント