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■引用原文(日本語訳)
彼は二つに分裂して*、ちぎれ雲のように滅びてしまわないか。
拠り所なく、ブラフマンの道において迷い。
―『バガヴァッド・ギーター』第6章 第38節
■逐語訳(一文ずつ)
- 彼は二つに分裂して、
- まるでちぎれ雲のように滅び去るのだろうか?
- どこにも拠り所なく、
- 真理(ブラフマン)の道の上で迷うことになるのだろうか?
■用語解説
- 二つに分裂して(ヴィブランシュタハ):信念と実践、欲望と理想の間で分裂し、決断できない状態。
- ちぎれ雲のように:不完全な存在、消えゆくもの、拠り所なき漂流者の象徴。
- 滅びてしまわないか:努力が無に帰すのでは、という不安。
- 拠り所なく(アプラティシュタハ):世俗にも霊的世界にも属さず、何にもつかまれない不安定さ。
- ブラフマンの道において迷い:悟り(真理)への道の途中で、方向を失ってさまようこと。
■全体の現代語訳(まとめ)
アルジュナは問う――
「ヨーガを志したが、道半ばで挫折してしまった者は、
まるでちぎれ雲のように、世俗の道にも聖なる道にも帰れず、
両方から切り離されて滅びてしまうのではないか?
拠り所もなく、ブラフマン(真理)の道の上で迷ってしまうのではないか?」
■解釈と現代的意義
この節では、アルジュナの不安がさらに深まっています。
彼が懸念するのは:
- 「努力したのに成功できなかった人」の 中途半端な状態
- 世俗の満足も得られず、悟りも得られず、ただただ「失敗者」として消えてしまうのではという 存在不安
- 結果として、何の価値も得られなかった「空虚な結末」
この問いは、現代においても共通の心理です。
学業・起業・修行・自己啓発・転職など、何かを「やりかけて」やめたとき――
人は、自分の選択や時間が無意味だったのではないかと不安になります。
しかし次節以降、バガヴァーン(クリシュナ)はその問いに対し、救いのある肯定的回答を与えていきます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
キャリア形成 | 志半ばで転職・撤退した人も「迷い」「葛藤」を通じて成長している。失敗=喪失ではない。 |
マネジメント | 途中でプロジェクトを離脱した者に対しても、その経験を価値ある「中間成果」として評価すべき。 |
教育指導 | 継続に至らなかった挑戦も、後に活きる“布石”となり得る。「迷ったことがある」人材には深みがある。 |
組織文化 | 一度の脱落や挫折で個人を否定せず、“再起”や“復路”を支援する包容力が組織を強くする。 |
■心得まとめ
「雲は流れても空には消えぬ」
道半ばで立ち止まることがあっても、
その志は失われていない。世俗にも悟りにも届かずとも、
漂う経験こそが後の光明となる。道を迷う者を憐れむな。
迷いを経てこそ、本当の覚悟は宿る。
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