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■引用原文(日本語訳)
自己との類比により*、幸福にせよ不幸にせよ、
それを一切〔の生類〕において等しいものと見る人、
彼は最高のヨーギンであると考えられる。
―『バガヴァッド・ギーター』第6章 第32節
■逐語訳(一文ずつ)
- 自己との類比(自己に倣って)によって、
- 幸福にせよ不幸にせよ、
- それをすべての生き物において等しく見る者は、
- その人こそ、至上のヨーギンであるとされる。
■用語解説
- 自己との類比(アートマウパマイナ):自分自身と同様に、他者も感じる・思う存在であるという理解。他人の立場になって考えること。
- 幸福と不幸(スカ・ドゥッカ):「快・不快」「楽・苦」の両方を指し、主観的な感受性に関わる。
- 一切の生類(サルヴァブータニ):人間のみならず、あらゆる生命ある存在を指す。
- 最高のヨーギン(パラム・ヨーギー):単なる修行者でなく、完成されたヨーガ行者を指す。
■全体の現代語訳(まとめ)
自分の感情や感覚になぞらえて、他者に起こる幸福や不幸を、
すべての存在において等しく理解できる者は、最も優れたヨーギンである。
■解釈と現代的意義
この節は「共感」と「同一視」を基盤にしたヨーガの完成形を描いています。
**「自分がされて嫌なことを他人にしない」「自分が望むことを他人にも与える」**という倫理の根本原理がここにあります。
最高の修行とは、自己の内面修練を超えて、他者への普遍的理解と共感に達することだと説かれています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
顧客理解 | 顧客の痛みや期待を「自分ごと」として感じ取れる企業や担当者は、真に信頼される。 |
リーダーシップ | 部下の境遇や不安に「自己を映す」ことで、真の配慮と支援が生まれる。 |
チーム運営 | メンバーが互いの状況を想像し、思いやりをもって接することで、組織は強くなる。 |
サービス精神 | 「自分がされて嬉しいこと」を基準にすれば、自然とホスピタリティの質が高まる。 |
■心得まとめ
「すべての他者に、自己を見る」
自分が感じるように、他者も感じる。
自分が痛むように、他者も痛む。この視点を持つ人は、
孤立せず、傲らず、真に調和の中に生きる。真のヨーギンとは、
自己を越えてすべてに心を通わせる者である。
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