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■引用原文(日本語訳)
「ヨーガに登ろうとする聖者にとって、行為が手段であると言われる。ヨーガに登った人にとって、寂滅が手段であると言われる。」
(『バガヴァッド・ギーター』第6章 第3節)
■逐語訳(一文ずつ)
- ヨーガの道を目指す修行者にとっては、行為(カルマ)が手段とされる。
- すでにヨーガに達した者にとっては、寂滅(精神の沈静・静寂)が手段とされる。
■用語解説
- ヨーガ(ヨーガ):精神の統一を目指す実践的な修行法。ここでは、特に「カルマ・ヨーガ」(行為を通しての修行)から「ディヤーナ・ヨーガ」(瞑想による静寂)への道筋を指す。
- 行為(カルマ):義務としての実践的な行動。執着を持たずに行うことで心を浄化し、精神統一の準備を整える。
- 寂滅(シャマ):静寂、心の完全な沈黙。瞑想によって感覚と欲望が鎮まり、心が止滅した状態。悟りに至るための段階。
- 登ろうとする(アーラブヤ):ヨーガの実践を始め、道に入る段階。
- 登った人(ユクタ):ヨーガを成就しつつある者、またはすでに熟達した人。
■全体の現代語訳(まとめ)
ヨーガの道を歩み始めた修行者にとっては、「行為」が心を鍛え整える手段となる。
一方で、ヨーガを成就しつつある者、あるいは既に成就した者にとっては、「寂滅(静寂・瞑想)」が次の手段となる。
つまり、行動から始まり、最終的には静けさに至るのがヨーガの段階である。
■解釈と現代的意義
この節は、修行のプロセスにおける「段階の違い」を明確に示しています。
最初は積極的な行動(カルマ)を通して心を整え、成熟した後は内面的な沈黙(瞑想・静けさ)によって深めていく。
これは、**「行動による成長」から「沈黙による完成」**への移行という、人間的成長プロセスの普遍的なモデルです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と適用例 |
---|---|
キャリアの段階 | 若手のうちは経験を積むための積極的な行動が求められ、熟練するにつれて「静かに考える力」「場を調える力」が必要となる。 |
リーダーの成長 | 初期のリーダーは率先して動くが、上位のリーダーほど沈黙と観察による導きが求められる。 |
学習と実践 | 初心者は手を動かして覚えるが、熟達者は「やらないこと」を選び、「間」を大切にするようになる。 |
組織運営 | 初期段階ではアクション重視の戦略、中期以降は意思決定の「沈黙の質」が組織の成熟を左右する。 |
■心得まとめ
「動く者はやがて、静かにすべてを見渡す」
行動は成長のための手段。けれども、その先にあるのは「沈黙」と「静寂」の力である。
真の成熟とは、動き続けることではなく、動きの中から静けさを見出すことにある――
このギーターの教えは、ビジネスにおいても、「行動の質」と「沈黙の力」の両輪を求める私たちに、明確な成長の階梯を示してくれる。
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