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私は行っていない――真に自由な行為者の境地


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📜 引用原文(日本語訳)

「しかし勇士よ、要素と行為が〔自己と〕無関係であるという真理を知る者は、
諸要素が諸要素に対して働くと考えて、執着しない。」
(『バガヴァッド・ギーター』第3章 第28節)


🔍 逐語訳

「しかしアルジュナよ、要素(グナ)と行為(カルマ)が真我とは関係ないと理解している人は、
“グナがグナに作用しているだけ”と見て、そこに執着を起こさない。」


🧩 用語解説

  • 要素(グナ:Guṇa):プラクリティ(自然)を構成する三つの性質。サットヴァ(純質)、ラジャス(激質)、タマス(暗質)。
  • 行為(カルマ:Karma):身体・言葉・心によるあらゆる行動。因果をもたらすもの。
  • 真理を知る者(タットヴァ・ヴィット):実相を理解する者。自己(アートマン)は行為の主体ではなく、自然の動きを観照する存在であると知る人。
  • グナがグナに作用する:自然の構成要素が、他の構成要素に影響を与えている状態であり、自己(真我)はその外にある。
  • 執着しない(ナ・サジュジャテ):心を巻き込まず、結果や役割に囚われない。

🗣 全体の現代語訳(まとめ)

真実を知る者は、「行為をしているのは自分ではない」と理解している。
実際に行為をしているのは、「自然の性質(グナ)」であり、
その作用は自然界の中で完結している。
この見方を持つことで、人は自分の感情や成果への執着から解放され、
内面に平静を保ちながら、現実世界で誠実に働くことができる


💡 解釈と現代的意義

この節は、精神的自由の極致を示しています。
日常で私たちは「自分がやった」「自分の責任」「自分の成果」と思い込みがちですが、
その多くは実際には外部要因(環境・気質・社会構造)の影響を受けているに過ぎません。
真我(本当の自己)は行為の主体ではなく、「見ている者(観照者)」なのです。
この境地に達した者は、自己責任や主体性を否定せずに、執着を手放した行動が可能になります。


🏢 ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
冷静な意思決定感情や自己評価にとらわれず、事実や要素(情報・状況)を見て判断できる。
失敗や成功の受容力成果に対して過剰に自己同一化せず、謙虚さと安定を保ちやすい。
ストレス耐性と集中力自分でコントロールできない要素(顧客、天候、株価など)に過剰反応しなくなる。
組織運営メンバーの行動や結果も“要素の作用”と捉え、感情的な非難を避けて建設的な指導ができる。

🧠 心得まとめ

「自然が行い、私は見ている――そこに自由が生まれる」

成功も失敗も、
喜びも怒りも、
すべては「グナがグナに働いている」現象である――
この理解は、「自分が行っている」という重さから心を解放し、
静かな観照と正しい行為の両立を可能にする。
それは逃避ではなく、むしろ最も深い責任のあり方です。

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