目次
■引用原文(日本語訳)
語り、排泄し、把促し、目を開き、閉じつつも。感官が感官の対象に働くのみと考えて。
(第5章 第9節)
■逐語訳
話し、排泄し、手を伸ばし、目を開け、閉じる――そのような行為をしていても、真理を知る者は、「これは感官がその対象に作用しているだけで、自分(我)が行っているのではない」と見る。
■用語解説
- 語り:言葉を発する行為。
- 排泄:身体の自然な生理現象。
- 把促(はそく):つかむこと、手で何かをすること。
- 感官(インドリヤ):感覚器官および行為器官。
- 対象(アルタ):視覚・触覚・嗅覚などに対する外界の刺激。
- 感官が感官の対象に働くのみ:身体の器官が自然にその役割を果たしているだけであり、「私」という主語を持つ必要はないという視座。
■全体の現代語訳(まとめ)
話したり、排泄したり、手を伸ばしたり、目を開けたり閉じたりしていても、それを自我の行為とは捉えず、「ただ身体の器官が対象に対して自然に反応しているだけだ」と理解しているのが、真に智慧ある者である。
■解釈と現代的意義
この節は、「行為における無我」の教えを深めています。通常私たちは、「自分がやっている」と考えることで行為に責任や重さを感じますが、ギーターでは、それはただの自然な働きであり、「私が」と捉えることで執着や煩悩が生まれると説きます。
これは、「自我の錯覚」を手放すことで、精神的な解放と軽やかさを得る方法でもあります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
業務のとらえ方 | 「これは自分の仕事だ」「やらねばならない」と思い詰めるのではなく、「今、やるべきことが自然に起きている」と捉えることで心が軽くなる。 |
責任と自由の両立 | 自己中心的な達成欲から離れ、「行為そのものが全体の一部である」と理解することで、責任感と客観性を両立できる。 |
習慣化とルーティン | 行為が「私の意志」ではなく「自然な働き」だと見ることで、習慣化がしやすくなり、疲労感も軽減される。 |
メンタルケア | 「これは私がやっている」という思いを緩めることで、過剰な自己批判やプレッシャーから自分を解放できる。 |
■心得まとめ
「行為に自我を重ねるな――ただ“それ”が起きている」
真の自由は、「私がやっている」という思い込みを手放すところから始まります。ビジネスでも、行為を自然の流れとして受け入れ、淡々と実践できる人ほど、長く成果を出し続けるのです。
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