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■引用原文(日本語訳)
「純質から知識が生じ、激質から貪欲が生ずる。暗質から怠慢と迷妄が生じ、また無知が生ずる。」
(第14章 第17節)
■逐語訳
純質(サットヴァ)からは、明確な知識が生まれる。
激質(ラジャス)からは、欲望と貪りが生まれる。
暗質(タマス)からは、怠慢と錯覚、さらには無知が生まれる。
■用語解説
- 純質(sattva):澄んだ知性・調和・誠実・明晰な心をもたらす性質。
- 知識(jñānam):洞察・真理・理解力。内面の静けさに基づいた本質的な知。
- 激質(rajas):情熱・行動・欲望を伴う動的な性質。
- 貪欲(lobhaḥ):満たされぬ欲望。物質・承認・成果への過剰な執着。
- 暗質(tamas):惰性・混乱・思考停止・意欲の欠如。
- 怠慢(pramādaḥ):集中力・警戒心の低下。真剣さの欠如。
- 迷妄(mohaḥ):真実を見誤る状態。自己や状況の誤認。
- 無知(ajñānam):知の欠如。理解せずに過ごすこと。気づかぬままに間違った方向に進むこと。
■全体の現代語訳(まとめ)
澄んだ心(純質)からは、真実を見抜く知性が自然と湧き出てくる。
欲望に突き動かされた心(激質)からは、より多くを求め続ける貪欲が生まれる。
鈍った心(暗質)からは、怠け、混乱し、無知なまま過ごす状態が生まれる。
つまり、心の性質が、思考と行動の質を決定する。
■解釈と現代的意義
この節は、「人の行動や人生の傾向は、その根にある“心の性質”から生まれる」という因果関係を明らかにしています。
現代人は、結果や行動を問題視することはあっても、「どんな心の性質からそれが生まれているのか」を見つめることは少ないかもしれません。
- 混乱した行動 → その根にはタマス(暗質)
- 欲に振り回される行動 → その根にはラジャス(激質)
- 落ち着きと理解のある判断 → その根にはサットヴァ(純質)
というように、外に現れる結果は内なる性質の反映であることを、この節は教えています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
判断の質=心の質 | 混乱しているときに出した結論は、たいていブレがある。明晰さ(純質)を取り戻してから決断すべき。 |
欲望ドリブンの落とし穴 | 「売上が欲しい」「評価されたい」といった激質的動機で動くと、長期的に信用や安定を失いやすい。 |
慢性的な停滞の根本原因 | チームや個人の停滞感・やる気のなさは、戦略よりも“タマス的心理状態”の問題であることが多い。 |
組織の性質と知の質 | 純質的組織は、内省・学習・対話が豊か。ラジャス的組織は目標や成果に偏りがち。タマス的組織は無関心や曖昧な責任が蔓延しやすい。 |
■心得まとめ
「行動の根には、心の性質がある」
知が生まれるのは、心が澄んでいるから。
貪欲が生まれるのは、心が執着に支配されているから。
怠慢と迷妄が生まれるのは、心が眠っているから。
だから、行動を正す前に、自分の“今の心の質”を見極めよ。
ビジネスにおいても、最も強い競争力は、内面の性質のコントロールから生まれる。
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