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■引用原文(日本語訳)
アルジュナよ、この三種の暗黒の門から解放された人は、自己にとって最善のことを行い、それから最高の帰趨(解脱)に達する。
(『バガヴァッド・ギーター』第16章 第22節)
■逐語訳(一文ずつ)
- アルジュナよ、
- この三種の暗黒の門(=欲望・怒り・貪欲)から解き放たれた者は、
- 自己にとって最も善い行い(シャレーヤム・アーチャラティ)を実践するようになる。
- そしてついには、最高の帰趨(パラーム・ガティム)――すなわち**解脱(モークシャ)**に到達する。
■用語解説
- 三種の暗黒の門:前節(第21節)に登場した「欲望・怒り・貪欲」の三毒。心を地獄へと導く根源。
- 最善のこと(シャレーヤム):自らの義務・本性・魂の成熟にとって真に良い行為。表面的な成功や快楽とは異なる。
- 最高の帰趨(パラーム・ガティム):魂の究極的目的地=悟り、解脱、自由。輪廻の終焉。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナはアルジュナに語る。欲望・怒り・貪欲という三つの闇から自らを解放した者は、自分にとって本当に良い行いを自然に実践するようになり、その結果、魂の究極的目的地である「解脱」へと到達することができる。
■解釈と現代的意義
この節は、「内面の解毒」と「正しい行動」の関係を説いている。
欲望・怒り・貪欲にとらわれている限り、どんなに善行をしているように見えても、本質的な善には至れない。
だがそれらを手放したとき、人は自然と“正しいこと”を選び取り、魂の自由に近づいていく。ギーターは、「自己実現とは“捨てること”から始まる」と教えている。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 教訓と実践的適用 |
---|---|
自己管理 | 欲望(過剰な野心)・怒り(感情的反応)・貪欲(独占思考)を乗り越えると、冷静かつ的確な判断ができるようになる。 |
人間力の成熟 | 心の清明さは、正しい行為(最善)を自然と選ばせる。これが信頼・尊敬・長期的成功につながる。 |
リーダーシップ | 欲や怒りに流されないリーダーは、組織に安心感と方向性を与え、持続的発展を可能にする。 |
企業文化の形成 | 三毒から解放された文化(協調・誠実・節度)は、健全な職場環境と創造性を育てる基盤となる。 |
■心得まとめ
「手放すことで、人は本当に進みはじめる」
欲望、怒り、貪欲――これらを捨て去ったとき、心は静まり、行為は清くなり、魂は自由に向かって進み出す。
ギーターは語る――三毒を超えた人だけが、本当に自分にとって善い道を選び、そして解脱に至る。
それは、勝つことでも、得ることでもなく、「超えること」である。
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