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【2-62〜2-63】 執着の連鎖と破滅への道

目次

◆第2章 第62節による心得

●原文引用

「人が感官の対象を思う時、それらに対する執着が彼に生ずる。執着から欲望が生じ、欲望から怒りが生ずる。」(第2章 第62節)


●逐語訳

  • 感官の対象を思う時:五感で得た外界の快楽や魅力に心が向くと、
  • 執着が生ずる:それを得たいという執念が心に芽生える。
  • 執着から欲望が生じ:さらにそれを手に入れたいという欲求が強まり、
  • 欲望から怒りが生ずる:欲望が満たされない時、怒りとなって現れる。

●用語解説

  • 感官の対象:視覚・聴覚・味覚などを通して知覚する外界の魅力。
  • 執着(サンガ):対象に対して離れがたい気持ちを抱くこと。
  • 欲望(カーマ):その対象を「必ず得たい」と願う強い気持ち。
  • 怒り(クローダ):欲望が阻まれた時に生まれる破壊的な感情。

●全体現代語訳

人が外界の快楽を心に思い描くと、それに執着するようになる。執着はやがて強い欲望を生み、欲望が妨げられると怒りへと変化していく。


●解釈と現代的意義

この節は欲望と怒りの連鎖の始まりを描いています。欲望自体は自然な感情ですが、執着を持つことでその感情が制御不能になり、怒りや対立を引き起こします。これは、職場のトラブルや経営上の失敗の根にも通じるものです。


●ビジネスへの応用

ビジネス状況応用ポイント
過剰な成果主義過度の達成欲からチームや顧客に対して攻撃的になることを防ぐ。
クレーム対応顧客の怒りの根に「期待=執着」があることを理解し、冷静に対応。
経営判断感情ではなく、執着を離れた客観的視点から判断する。

●ビジネス心得タイトル

「執着の芽が、怒りの火を呼ぶ」


◆第2章 第63節による心得

●原文引用

「怒りから迷妄(めいもう)が生じ、迷妄から記憶の混乱が生ずる。記憶の混乱から知性の喪失が生じ、知性の喪失から人は破滅する。」(第2章 第63節)


●逐語訳

  • 怒りから迷妄(まいもう)が生じ:怒りによって理性が曇り、現実を誤って把握するようになる。
  • 迷妄から記憶の混乱が生ずる:正しい知識や経験に基づいた記憶が混乱し、
  • 記憶の混乱から知性の喪失が生じ:冷静な判断力を失い、
  • 知性の喪失から人は破滅する:結果として行動や人生が崩壊する。

●用語解説

  • 迷妄(moha):錯覚・錯誤。真理から外れた認識状態。
  • 記憶の混乱(smṛti-bhraṁśa):正しい記憶や価値判断のズレ。
  • 知性の喪失(buddhi-nāśa):判断能力・分別の消失。
  • 破滅(praṇaśyati):人格・判断・人生の崩壊。

●全体現代語訳

怒りが生まれると心は錯乱し、正しい記憶や判断が混乱してしまう。そして知性が失われたとき、人は破滅へと向かっていく。


●解釈と現代的意義

この節は、怒りから破滅に至るまでの心の崩壊プロセスを非常に明確に示しています。これは、現代のメンタルマネジメントやリーダーの資質にもそのまま通じます。怒りを起点とする判断の誤りは、組織をも揺るがしかねません。


●ビジネスへの応用

ビジネス状況応用ポイント
パワハラ・感情的な指導一時の怒りが信頼関係や組織文化を破壊するリスクを理解する。
クライシスマネジメント怒りに支配されず、冷静な記憶と理性を取り戻す仕組みを持つ。
戦略判断感情的な失望や焦りから重要な判断を誤らないように、自分を整える習慣を持つ。

●ビジネス心得タイトル

「怒りの連鎖が、理性と未来を壊す」


この第62~63節はセットで、「感官→執着→怒り→破滅」という流れを描く人間心理の連鎖モデルです。
この連鎖を断ち切るには、最初の「思うこと(念)」を見張ることが鍵となります。

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