MENU

求めずして成す──無事こそ最大の功績、無怨こそ最高の徳

目次

『菜根譚』より

1. 原文:

處世不必邀功,無過便是功。
與人不求感德,無怨便是德。


2. 書き下し文:

世に処するに、必ずしも功(こう)を邀(もと)めざれ。過(あやま)ち無きは、すなわち是れ功なり。
人と与(とも)にするに、徳(とく)に感ずることを求めざれ。怨(うら)み無きは、すなわち是れ徳なり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ):

  • 「世に処するに、必ずしも功を邀めざれ」
     → 世の中で立ち回るとき、無理に功績を得ようとする必要はない。
  • 「過ち無きは、すなわち是れ功なり」
     → 過ちを犯さず、穏やかに物事を処理すること自体が立派な功績である。
  • 「人と与にするに、徳に感ずることを求めざれ」
     → 人に何かをしてあげたとき、感謝や恩義を求めてはならない。
  • 「怨み無きは、すなわち是れ徳なり」
     → 相手から恨まれずに済んだなら、それだけで十分に徳のある行いといえる。

4. 用語解説:

  • 處世(しょせい):世間を渡る、社会での立ち振る舞い。
  • 邀功(ようこう):手柄を求めること、功績を誇ること。
  • 無過(むか):過ちや失敗がない状態。
  • 感德(かんとく):恩に感じること。
  • 無怨(むえん):恨まれることがない状態。

5. 全体の現代語訳(まとめ):

世の中でうまくやっていこうとする時には、無理に手柄を立てようとする必要はない。
失敗せず、穏やかにことを運ぶことこそが、本当の意味での功績である。
また、人に何かしてあげたとしても、その見返りとして感謝や称賛を求めるべきではない。
相手から恨まれなかったなら、それだけで十分に徳のある行いといえる。


6. 解釈と現代的意義:

この章句は、**「無欲・無私の振る舞いこそが、真の功績や徳である」**という思想を端的に表現しています。

  • 成果主義の落とし穴に対する警鐘
     手柄を追い求めると、かえって争いや摩擦を生み出す。
     むしろ、無事に事を収める・人に恨まれずに接するという「負のない状態」が尊ばれるべきだという教訓です。
  • “何もしないように見えても、実は大きな価値”
     大声で自分の成果を誇示しない人でも、問題なく仕事を進め、周囲と調和している人は、真に功績を上げている。
  • 「恩着せがましさ」の排除
     人にしてあげたことに感謝を強要すれば、それは徳ではなく傲慢になります。真の徳は、見返りを求めず自然に為される行い。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き):

  • 「無理に手柄を主張するより、ミスなく成果を出すことが評価につながる」
     表面に出る成果だけでなく、失敗しない運用・安定した進行もまた、見えにくい“功績”。
  • 「与えた恩を押しつけるな」
     部下や同僚を助けたとしても、見返りや感謝を求めてはいけない。
     そのような姿勢は関係性を壊し、むしろ恨みや距離を生む。
  • 「調和の取れた存在が組織にとって貴重」
     衝突を起こさず、人を不快にさせず、陰から支える存在は、組織の“見えざる功労者”である。

8. ビジネス用の心得タイトル:


この章句は、功を誇らず、徳を押しつけず、静かに成果と調和を実現する姿を理想として示しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次