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小国は奪えても、天下の心までは奪えない

孟子は、仁を欠いた者でも、一時的に一国を支配することはありうると認めつつ、中国全土=天下を治めた例はないと断言する。
それはつまり、不仁の者は一時の権勢を握ることはできても、永続的な天下の信任を得ることは決してできないということを意味している。

「国」は領土や軍事力によって制圧できても、「天下」は民心・道義・天意によって支えられるもの。
孟子はここで、支配の正当性は力ではなく「仁」に基づくべきだという自らの核心思想を強く打ち出している。

そしてこの思想は、単に古代の王権論にとどまらず、現代におけるリーダーシップや組織運営にも通じる普遍的な原理を示している。
他者に信頼され、共感される徳のある行いこそが、大きなものを束ねる力になるのだ。


引用(ふりがな付き)

「孟子(もうし)曰(いわ)く、不仁(ふじん)にして国(くに)を得(え)る者(もの)は、之(これ)有(あ)らん。不仁(ふじん)にして天下(てんか)を得(え)るは、未(いま)だ之(これ)有(あ)らざるなり」


注釈

  • 不仁(ふじん)…人の情や道徳を欠いた状態。冷酷さ・利己心の象徴。
  • 国(くに)…一つの領地・諸侯の統治範囲。戦略・武力でも奪い得る範囲。
  • 天下(てんか)…全中国、または「天下万民」の信任を受ける統治。道義に基づく支配。
  • 未之有也(いまだこれあらざるなり)…今に至るまでそのような例は存在しない、という強い断言。
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