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五ヵ条を犯した今の諸侯は覇者の罪人である

五つの誓いを守らない今の諸侯は罪人である

孟子は言った。
「春秋時代の五覇の中で、斉の桓公が最も盛んでした。桓公が主催した葵丘の会では、諸侯が集まり、犠牲を縛ってその上に誓約書を載せることで誓いを立てました。しかし、血をすすらず、ただ誓約書だけで確認されたこの誓いは、以下の五つの内容でした。」

  1. 親不孝者は誅罰し、世継ぎは一度決めたら変えないこと
  2. 賢者を尊び、才能を育成して、有徳者を表彰すること
  3. 老人を敬い、幼い者を愛し、賓客や旅人を粗末にしないこと
  4. 士の官職は世襲にせず、兼任させず、立派な士を採用すること。大夫を勝手に殺してはならないこと
  5. 堤防を曲げて作らず、他国の米を買うことを妨害せず、臣下に領地を与えたら必ず報告すること

これらの五つの誓いは、諸侯の正しい統治の基盤として守られるべきものでしたが、今の諸侯たちはこれを犯しています。
そのため、孟子は「今の諸侯は、五覇の罪人である」と宣言します。

孟子が批判しているのは、**「覇者のように自らの利益を優先して他の諸侯を討つ行動」**だけでなく、桓公が定めた誓いに基づく道徳的な指導を守らず、利己的に支配を行っている点です。
桓公の誓いは、正義と徳に基づいた理想的な支配の姿であり、それを今の支配者たちが無視していることへの警告です。


原文と読み下し

曰、五霸、桓公為盛、葵丘之会、諸侯束牲を載し、書を載せ、而も歃血せず。初命曰、誅不孝、無易樹子、無以妾為妻。再命曰、賢育才、以彰徳。三命曰、敬老、幼を慈しみ、賓旅を忘るること無かれ。四命曰、士無世官、官事無攝、取士必得、無専に大夫を殺すこと無かれ。五命曰、無曲防、無遏糴、無封而不吿。曰、凡我同盟之人、既に盟うの後、言に帰せんと。今の諸侯、皆此の五禁を犯せり。故に曰く、今の諸侯は、五霸の罪人なり。

孟子(もうし)は曰(いわ)く、「五霸(ごは)、桓公(かんこう)を盛んなりと為す。葵丘(ききゅう)の会に、諸侯(しょこう)牲(いけにえ)を束ね、書を載せ、而も歃血せず。初命(しょめい)曰く、『不孝を誅せよ、樹子(しゅし)を易うこと無かれ、妾を以て妻と為すこと無かれ』。再命(さいめい)曰く、『賢を育て、才を成し、以て徳を彰(あらわ)せよ』。三命(さんめい)曰く、『老を敬い、幼を慈しみ、賓旅(ひんりょ)を忘れざること無かれ』。四命(しめい)曰く、『士(さむらい)は世官(せいかん)を為さざること、官の事を摂せしむること無かれ、士を取ること必ず得よ、専(もっぱら)に大夫(たいふ)を殺すこと無かれ』。五命(ごめい)曰く、『防(つつみ)を曲げること無かれ、糴(てき)を遏(とど)めること無かれ、封ずること有りて告げざること無かれ』。曰く、『凡そ我が同盟の人、既に盟うの後、言に帰せん』。今の諸侯は、皆此の五禁(ごきん)を犯せり。故に曰く、『今の諸侯は、五霸の罪人なり』。」


※注:

  • 五霸(ごは):春秋時代の五人の覇者。斉の桓公、晋の文公、秦の穆公、宋の襄公、楚の荘王を指す。
  • 葵丘(ききゅう):現在の江南省にある場所。五覇が誓いを立てた会合の場所。
  • 牲(いけにえ):犠牲。神に捧げる動物など。
  • 歃血(しゃけつ):血をすすって誓いを立てる儀式。誓約を行うための儀礼。
  • 樹子(しゅし):世継ぎ。後継者を指す。
  • 賓旅(ひんりょ):賓客や旅人。来客を意味する。
  • 防(つつみ):堤防。ここでは防壁や築堤に関する誓い。
  • 糴(てき):穀物を買い入れること。特に米などを指す。

パーマリンク案(英語スラッグ)

  • the-five-pledges-of-the-rulers(支配者たちの五つの誓い)
  • broken-oaths-of-the-tyrants(暴君たちの破られた誓い)
  • rulers-failing-their-pledges(誓いを破る支配者たち)

この章では、桓公が定めた五つの誓いを破った現在の諸侯たちに対して、孟子が厳しく批判していることが伝えられています。

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