孟子は、周の封建制度における「領土=俸禄の実体」として、爵位ごとの土地規模の違いを解説している。
これは単なる領地ではなく、地位と職責に基づいて与えられる政治的な範囲を意味する。
そして、規定より小さな国は天子に直接会う資格を持たず、諸侯の傘下で「附庸(ふよう)」と呼ばれる従属国となる。
また、天子が自国の卿・大夫・士に分け与える土地も、諸侯の国に準じた規模となっていた。
ここに、統一された土地配分ルールによる秩序と公平の精神が読み取れる。
原文と読み下し
**天子(てんし)の制(せい)**は、地(ち)、方(ほう)千里。
公・侯(こう・こう)は皆、方百里。
伯(はく)は七十里。子・男(し・だん)は五十里。凡(およ)そ四等なり。五十里に足らざるは、天子に達せず、諸侯に附(ふ)するを、**附庸(ふよう)**と曰(い)う。
天子の卿(けい)は、地を受(う)くること侯に視(なぞ)らえ、
大夫(たいふ)は地を受くること伯に視え、
元士(げんし/=上士)は地を受くること子・男に視う。
解釈と構造図
■ 封建領土の階級と規模
位階 | 名称 | 標準的な領土規模(方形) |
---|---|---|
天子 | 周王 | 方千里(約1000×1000里=百万平方里) |
公・侯 | 諸侯の上位 | 方百里 |
伯 | 中堅の諸侯 | 方七十里 |
子・男 | 諸侯の下位 | 方五十里 |
- 「方」は正方形の意。面積は縦×横の概念。
- 土地は位階に応じて割り当てられ、統治の範囲を意味していた。
■ 附庸(ふよう):小国の扱い
- 面積が五十里四方に満たない小国は、天子に直接会うことが許されず。
- 近隣の諸侯の庇護下に入り、「附庸」として従属する。
- これは規模によって外交権を制限し、序列を明確にする制度。
■ 天子の臣下への土地分配(国内統治の反映)
地位 | 土地の規模 |
---|---|
卿 | 侯と同じ(百里四方) |
大夫 | 伯と同じ(七十里四方) |
元士(上士) | 子・男と同じ(五十里四方) |
- 天子の臣下にも諸侯の格に準じた土地が与えられ、国内での封建秩序が再現されていた。
注釈
- 天子(てんし):周王朝の君主。全土の統治者。
- 公・侯・伯・子・男:五等爵(周の封建諸侯制の階級)。
- 方○里:四方○里の意味。正方形の面積表現。
- 附庸(ふよう):小国で、独立性がなく、諸侯の庇護を受ける国。
- 卿・大夫・元士:天子直属の臣下たち。国内において封地をもって統治を担当。
パーマリンク(英語スラッグ)
land-distribution-in-zhou
→「周における土地の配分制度」を表したスラッグです。
その他の案:
territorial-hierarchy
(領土による序列)feudal-land-grants
(封建的土地授与制度)size-defines-access
(規模が外交と位を決める)
この章は、制度的な土地の配分=爵禄制の実質的な根拠を示した内容であり、
孟子が語る「略=概略」情報の中でも、具体的な封建秩序の構造を理解するための基盤となる章です。
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