ある日、太宗が狩猟に出かけた際、途中で雨が降ってきた。
太宗が「雨具はどうすれば漏れないだろうか」と尋ねると、諫議大夫・谷那律はこう答えた。
「瓦で作れば、決して漏れません」
この一言には、「陛下には野外ではなく瓦屋根のある宮殿(=政務)にいてほしい」という深い諫めが込められていた。
つまり――**「狩りより政務を」**という無言の忠言である。
この機知に富んだ返答に太宗は大いに感心し、谷那律に絹五十疋と金帯を賜った。
■心得
- 諫言は、理詰めよりも機知が効くこともある
- 軽やかな一言に、深い忠義が宿る
- 帝王は風雨を避けるより、政務の屋根の下に安んじるべき
■引用(ふりがな付き)
「能(よ)く瓦(かわら)を以(もっ)て之(これ)を作(つく)らば、
必(かなら)ず漏(も)ること無し」
■注釈
- 谷那律(こく ならつ):唐の忠臣。諫議大夫(かんぎたいふ)として皇帝に諫言を行う役職。
- 瓦(かわら):ここでは文字どおりの防水材としての意味と、屋根=宮殿=政務を象徴する比喩。
- 絹五十疋と金帯:天子の賞賜として非常に重い褒美。谷那律の言葉がただの冗談ではなく、忠誠から出たものであったことを証明している。
■パーマリンク(英語スラッグ)
tile-roof-wisdom
その他の候補:
- shelter-in-palace
- clever-counsel
- rainproof-by-duty
この短い章は、**「ユーモアを通じて忠義を語る」**という、中国古典ならではの美徳をよく表しています。
コメント