MENU

民が耕し、家に礼があれば、国は豊かである

―『貞観政要』巻二より

🧭 心得

真の国の富とは、宮殿の壮麗さや財貨の多寡にあるのではなく、民が安心して田畑を耕し、家族や隣人との間に礼が行き届く社会にこそ存在する。
貞観十六年、穀物が豊作となり価格が下落したことを受け、太宗は「国の根本は民、民の命は食にあり」と強調し、自らは倹約に努めると語った。そして、税を減らして民の労力を取りすぎず、農業に専念できる社会をつくることこそ、富貴の真の在り方だと述べた。
国中に礼と和が満ちていれば、音楽や娯楽を求めずとも、そこに深い喜びがあるのだと説いている。

🏛 出典と原文

貞觀十六年、太宗(たいそう)、天下の粟價(ぞくか)を以(も)って計(はか)るに、一斗(いっと)五銭(ごせん)、最も賤(やす)き処(ところ)は三銭(さんせん)なり。因(よ)って侍臣(じしん)に謂(い)いて曰(いわ)く、
「国(くに)は民(たみ)を以(もっ)て本(もと)と為(な)し、人(ひと)は食(しょく)を以(もっ)て命(いのち)と為(な)す。若(も)し禾黍(かしょ)登(みの)らずんば、則(すなわ)ち兆庶(ちょうしょ)は国家(こっか)の所有(しょゆう)に非(あら)ず。
今(いま)豊稔(ほうねん)このごとし。われ億兆(おくちょう)の人の父母(ふぼ)と為(な)るに属(ぞく)し、唯(ただ)躬(みずか)ら儉(けん)を務(つと)めんと欲(ほっ)し、必(かなら)ずしも輒(たやす)くして奢侈(しゃし)を為(な)さじ。

常に天下の人に賜(たま)いて、皆(みな)富貴(ふうき)たらしめんと欲(ほっ)す。今(いま)徭賦(ようふ)を省(はぶ)き、その時(とき)を奪(うば)わず、比屋(ひお)の人をして、恣(ほしいまま)に其(そ)の稼(か)を為(な)さしめば、此(こ)れすなわち富(と)めるなり。

敦(とん)に礼譲(れいじょう)を行(おこな)い、閭(りょ)の間(かん)をして、少(わか)き者(もの)は長(ちょう)を敬(けい)し、妻(つま)は夫(おっと)を敬(けい)せしめば、此(こ)れすなわち貴(とうと)しきなり。

ただ天下(てんか)皆(みな)然(しか)らしめば、たとえ管絃(かんげん)を聴(き)かず、畋獵(てんりょう)に従(したが)わずとも、楽(たの)しみはその中(なか)に在(あ)り」。

🗣 現代語訳(要約)

貞観十六年、穀物が豊作となり、太宗は「食が満ちれば国は治まる」と語った。民が自由に耕作できる環境こそが富の源であり、そこに礼と敬愛があれば、それが貴さである。君主は倹約に努め、民に豊かさを与えることで、真の楽しみを得るのだと述べた。

📘 注釈

  • 比屋(ひお):家々。庶民の家庭の意。
  • 豊稔(ほうねん):豊作の年。
  • 徭賦(ようふ):労役および租税。
  • 管絃(かんげん):笛や琴、楽器による音楽演奏。
  • 畋獵(てんりょう):狩猟や野遊び。王侯の娯楽。

🔗 パーマリンク案(英語スラッグ)

  • prosperity-through-peaceful-plow(主スラッグ)
  • 補足案:wealth-in-rural-harmony / true-riches-are-in-the-fields / ruler-finds-joy-in-people's-plenty
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次