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生まれし日は、親を偲ぶ日

―『貞観政要』巻一より

🧭 心得

誕生日は、自分を祝う日ではなく、命を与え育ててくれた親への感謝と追慕の日であるべき。
太宗は、自身の誕生日に際し、世俗的な祝賀を否定し、母の出産の苦しみと両親の恩を思って涙した。
孝を第一とする儒家の精神に従い、「生んでくれた苦労の日に、自らの楽しみを優先させるのは礼に背く」と語った姿勢には、深い親思いと誠実な人間性が表れている。

🏛 出典と原文

貞觀十七年、十二月癸丑(きちゅう)、太宗(たいそう)侍臣(じしん)に謂(い)いて曰(いわ)く、
「今日(こんにち)は是(これ)我(わ)が生日(せいじつ)なり。俗間(ぞくかん)には生日をもって喜楽(きらく)と為(な)すべしとすれども、在(あ)に於(お)いては、感思(かんし)の情(じょう)深(ふか)し。
君(きみ)にして天下(てんか)に臨(のぞ)み、四海(しかい)を富有(ふゆう)すといえども、親(おや)を求(もと)めて侍養(じよう)することは、永く得(え)ざるなり。
仲由(ちゅうゆ:子路)は米を負(お)いての恨(うら)みを懐(いだ)きしが、良(まこと)に以(ゆえ)あるなり。
況(いわ)んや『詩』に云(い)う『哀哀(あいあい)たる父母(ふぼ)、我(われ)を生(う)みて劬労(くろう)す』と。
奈何(いかん)ぞ、劬労(くろう)の辰(ひ)を以て、宴楽(えんがく)の事(こと)と為(な)すべけんや。甚(はなは)だ是(これ)禮度(れいど)に乖(そむ)くなり」。

因(よ)って泣(な)き下(くだ)りて久(ひさ)しく之(これ)あり。

🗣 現代語訳(要約)

太宗は、誕生日は母が命を賭して産んでくれた日であり、それを祝って楽しむのは親の恩を忘れた行為であると述べた。自分がいかに富と権力を得ても、すでに亡き両親に孝を尽くすことはできず、その哀しみに涙した。

📘 注釈

  • 生日(せいじつ):誕生日。
  • 劬労(くろう):親が子を産み育てる際の苦労。
  • 侍養(じよう):親を傍らにおいて仕え、養うこと。孝養を尽くす意。
  • 子路(しろ):孔子の高弟で、両親への孝行を強く願っていた人物。
  • 『詩経』:中国最古の詩集。親孝行や倫理的情愛の教訓を多く含む。

🔗 パーマリンク案(英語スラッグ)

  • birthday-is-for-mother(主スラッグ)
  • 補足案:reflect-not-rejoice / remembering-mothers-labor / true-filial-gratitude

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