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礼は名目よりも実情を尊ぶ

―『貞観政要』巻一より

🧭 心得

礼の本質は、形式にとらわれるのではなく、人としての恩と情に基づくべきものである。
太宗は、血縁が近くとも喪に服さない規定や、逆に縁遠い者への重すぎる礼の取り扱いに疑問を抱き、制度の再検討を命じた。
魏徴らはこれを受けて、血縁と同居・恩義の実情を両軸とし、過不足のある服喪制度を修正した。礼は人の真心から生じるものであり、死後の扱いが生前の情に見合わぬようでは、本来の礼の意味を失う。礼制は「名」と「実」を一致させることでこそ、世の規範たり得る。

🏛 出典と原文(抄訳)

太宗謂禮官曰、「同爨して暮らした親族には三月の喪に服する恩があるのに、嫂や夫の弟には規定がない。母の兄弟と姉妹も親疎はほぼ同じなのに、服喪の扱いに差がある。これは礼に適っているとは言えない。学者を集めて詳しく議論し、他にも礼に合わぬ規定があれば報告せよ」。

魏徴らの上奏:「礼とは疑いを解き、是非を明らかにするものであり、天や地から出たものではなく、人の情から生まれたものです。……嫂や義弟との関係も、共に暮らし深い恩があれば、実子と同様に扱うべきです。生前には家族同様に過ごしながら、死後に縁遠い者として扱うのでは、礼の理念に反します。……古来、嫂を敬った者の例は史書に数多く記され、真の礼はそこにあるのです」。

最終的な提案:

  • 曾祖父母:旧・三月 → 新・五月(斉衰)
  • 嫡子の妻:旧・九月(大功)→ 新・一年(期)
  • 庶子の妻・兄弟の子の妻:旧・五月(小功)→ 新・九月(大功)
  • 嫂・夫の弟/弟の妻・夫の兄:旧・規定なし → 新・五月(小功)
  • 母の兄弟:旧・三月(緦麻)→ 新・五月(小功)

太宗はこれを認め、詔して制度を改めた。

🗣 現代語訳(要約)

太宗は、親族間の礼における不整合を正すべく、魏徴らに再検討を命じた。その結果、血縁・同居・恩義の三要素に基づいて服喪の基準が見直され、人情に即した新たな礼制度が整備された。

📘 注釈

  • 小功・大功・期・斉衰(さいすい):いずれも服喪の等級や期間を表す用語で、「期」が最重(1年)、次いで「大功(9月)」、「小功(5月)」、「緦麻(3月)」と続く。
  • 同爨(どうさん):同じ釜の飯を食べる、すなわち共に暮らすこと。恩の深さの指標とされた。
  • 嫂(そう):兄の妻。義理の姉にあたる。
  • 舅甥の国(きゅうせいのくに):母の兄弟と甥との親密な関係を称した古典的表現。

🔗 パーマリンク案(英語スラッグ)

  • rituals-must-reflect-reality(主スラッグ)
  • 補足案:true-grief-honors-love / family-beyond-blood / renewing-rites-by-heart
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