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学を政の礎とせよ


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文学と儒学をもって、政治を磨く

太宗は即位の初期、ただ武力で国を治めるのではなく、学問を重んじる政治の基盤を築こうとした。
その象徴が、正殿の東に設置された「弘文館」である。

ここには、文才と儒学に優れた人々を全国から選抜し、彼らには本来の官職に加えて「弘文館学士」という称号と五品官に準じた待遇を与えた。
彼らは交代で宮中に宿直し、太宗は政務の合間に彼らを内殿に招いて、古典(墳典)の討論や政治課題の協議を行った。
議論は夜遅くまで及ぶこともあり、学問が日々の政治と深く結びついていたことがうかがえる。

さらに、功績のある三品以上の高官の子孫には、弘文館の学生としての学びの機会を与え、教養の継承と徳の育成を図った。
これは、太宗が「文化による統治(文治)」を志し、「賢者を集め、問い、学ぶこと」を実践していた証である。

この章は、「政治の成否は知と徳の蓄積による」との太宗の信念を示しており、学問と人材育成こそが永続する国家の土台であるという深い教訓を伝えている。


出典(ふりがな付き引用)

「正殿(せいでん)の左(ひだり)に弘文館(こうぶんかん)を置(お)く」
「天下(てんか)の文儒(ぶんじゅ)を精選(せいせん)し、本官(ほんかん)を以(も)って学士(がくし)に署(しょ)し、五品(ごほん)の珍膳(ちんぜん)を給(たま)う」
「更日(こうじつ)にて宿直(しゅくちょく)し、墳典(ふんてん)を討論(とうろん)し、政事(せいじ)を商略(しょうりゃく)す。或(あるい)は夜分(やぶん)に至(いた)りて乃(すなわ)ち罷(や)む」
「勳賢(くんけん)三品(さんぴん)已上(いじょう)の子孫(しそん)をして弘文学生(こうぶんがくしょう)と為(な)さしむ」


注釈

  • 弘文館(こうぶんかん):学問の府。文臣・儒者の知識を政治に活かす場。
  • 墳典(ふんてん):古代の経典・歴史書。儒教的知識や国家の規範となる書物。
  • 商略(しょうりゃく):意見を出し合って相談すること。実務的な政策議論。
  • 珍膳(ちんぜん):上級官人に提供される特別な食事待遇。
  • 勳賢(くんけん):功績や徳をもって高位に就いた人。家系による人材育成にも重点が置かれた。

パーマリンク(スラッグ)案

  • govern-through-learning(学問を以て治めよ)
  • wisdom-in-politics(政に学問を)
  • institutionalize-virtue(徳を制度に)

この章は、学問が単なる知識のためでなく、**「政(まつりごと)を磨くための行い」**であるという思想をよく表しています。
政治と学術の融合は、時代を超えて組織運営や人材育成の指針となりうる重要な教訓です。

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