MENU

欲に溺れれば、国も身も滅ぶ


目次

小さな欲に目を奪われ、大きな徳を失うなかれ

貞観二年、太宗は「真に財を愛する者は、不正によってそれを失うような愚は犯さない」と語った。
高位の官僚たちは十分な俸給を得ているにもかかわらず、わずかな賄賂に手を出し、地位も名誉も失ってしまう。
これは、本当の意味で「財を愛する心」を理解していないことの証だと断じた。

太宗は、魚を好んだが人からの贈り物は受け取らなかった魯の公儀休の故事を引き、「正道に従えば欲しいものは自ずと得られる」と説く。
一方、戦国時代の蜀王のように黄金に目がくらんで国を失った者や、前漢の田延年のように巨額の賄賂で命を落とした者の例を挙げ、
為政者の欲は国を、臣下の欲は自身を滅ぼすと強く警告した。

この章の核心は、「欲望」そのものが悪なのではなく、制御できない欲こそが破滅を招くということである。
真に大事なものは一時の利益ではなく、積み上げた信用と国家の安定である。
目先の得にとらわれず、長く誇れる行いを選びたい。


出典(ふりがな付き引用)

「嘗(かつ)て謂(い)う、貪(たん)なる人(ひと)は財(たから)を愛(あい)することを解(かい)せず」
「規(はか)って小(しょう)を得(え)て大(だい)を失(うしな)う者(もの)なり」
「爲(た)めに主(しゅ)貪(むさぼ)れば、必(かなら)ず其(そ)の国(くに)を喪(ほろ)ぼし、爲臣(しん)貪れば、必ず其(そ)の身(み)を喪(ほろ)ぼす」
「詩(し)に云(い)う、『大風(たいふう)隧(みち)有(あ)り、貪人(たんじん)類(るい)を敗(やぶ)る』と。固(もと)より謬言(びゅうげん)に非(あら)ず」
「今(いま)、以(もっ)て蜀王(しょくおう)を元龜(げんき)となし、卿等(けいとう)は延年(えんねん)を以(もっ)て鑑(かがみ)とせよ」


注釈

  • 公儀休(こうぎきゅう):魯の清廉な官僚。好物の魚を自らの禄で買い、他人の贈り物は受け取らなかった。
  • 元龜(げんき):模範・戒めとすべき事例のこと。
  • 延年(えんねん)を以て轍(てつ)と為せ:「轍(わだち)」は過去の失敗の跡。反面教師として学べという意。
  • 贓賄(ぞうわい):不正な賄賂や収賄のこと。
  • 規小得而大失(しょうをえしてだいをうしなう):目先の小さな利益を追って、大きな損失を招く愚行。

パーマリンク(スラッグ)案

  • greed-ruins-all(欲はすべてを壊す)
  • true-wealth-is-integrity(真の富とは清廉であること)
  • learn-from-loss(過去の滅亡に学べ)

この章は、現代の組織や社会においても繰り返される倫理と欲望のせめぎ合いを鋭く捉えており、
「公の立場にある者は、私欲を慎むべし」という普遍的な原則を強く訴えています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次