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愛する者こそ、遠ざけて守れ


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愛情と配慮は別物である

太宗は才能を評価していた皇子・魏王李泰を宮中の武徳殿に住まわせた。
それに対し魏徴は、李泰が過度に寵愛されているように見えることが周囲に誤解を与えかねず、また本人にも負担を与えると強く諫言する。

魏徴の主張は、次の3点に集約される:

  1. 寵愛するからこそ、分をわきまえさせ、慎ませるべき
     甘やかすのではなく、徳を育むために節度を持たせる。
  2. 周囲の目を意識し、疑念を招く配置を避けるべき
     過去に同じ場所に住んだ王族が不幸にあった前例をふまえ、歴史の教訓を活かす。
  3. 本人の精神的な平穏にも配慮すべき
     寵愛があるからこそ恐れが生じる。愛される者はそれだけ慎み深くあろうとする。

太宗はこれを聞いて深く反省し、魏王をもとの住まいに戻す決断をした。

この一章は、「配慮とは物理的に近づけることではない」という教訓を与えてくれる。
真の配慮とは、遠くに置いてでも徳を養い、安心を与えることにある。
特に地位と影響力を持つ人物に対しては、なおさら慎重であるべきである。


出典(ふりがな付き引用)

「魏王(ぎおう)は是(これ)陛下(へいか)の愛子(あいし)にして、須(すべか)らく其(そ)の定分(ていぶん)を知(し)らしめ、常(つね)に安寧(あんねい)を保(たも)ち、事毎(ことごと)に其(そ)の驕奢(きょうしゃ)を抑(おさ)うべく、疑(うたが)わしきの地(ち)に処(お)かしむべからず」
「我(われ)幾(ほとん)ど思量(しりょう)せずして、甚(はなは)だ大(おお)いに錯(あやま)たらんとす」
「能(よ)く寵(ちょう)を以(もっ)て懼(おそ)れと為(な)す」


注釈

  • 定分(ていぶん):自分の立場・身分をわきまえること。
  • 驕奢(きょうしゃ):驕りと贅沢。若い王族にとって避けるべき性質。
  • 疑わしきの地:誤解や疑念を生じさせる場所、権力争いの舞台となりうる環境。
  • 寵を以て懼れと為す:愛されることに対して、かえって恐れ慎む心を持つこと。

パーマリンク(スラッグ)案

  • distance-for-dignity(節度ある距離が徳を育てる)
  • loving-with-restraint(愛しているからこそ慎む)
  • avoid-appearance-of-favoritism(寵愛の誤解を避けよ)
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