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礼は師を尊ぶことに始まる

――皇太子であっても、師には頭(こうべ)を垂れるべし

太宗は、皇太子が師傅を敬うことでこそ、真に道徳を学ぶ姿勢が育まれると考えた。
三師(太子太師・太子太傅・太子太保)は道徳をもって導く存在であるから、形式的にも実質的にも、師の位を軽んじてはならない。

そこで太宗は、皇太子が三師に接する際の儀式(儀注)を定めた。
その内容は極めて丁寧で、皇太子が門外で出迎え、先に礼をしてから三師が答礼し、門では三師に道を譲り、三師が座ってから初めて皇太子が着座するという徹底ぶりである。

さらに、書状の文頭・文末には「惶恐(こうく)」という言葉を添え、深い敬意を明示させた。

これは単なる形式ではない。
礼をもって敬意を示すことで、皇太子自身が「学ぶ者」としての謙虚さを身に付けることを意図している。


引用とふりがな(代表)

「三師(さんし)は徳をもって人を導く者なり。もし師の体(たい)卑(ひ)しければ、太子(たいし)これを取るに則(のり)無し」
――師の威厳なくして、太子の模範とはなり得ない

「名に惶恐(こうく)を冠(かぶ)らせ、後にも惶恐再拝(さいはい)と記さしむ」
――文字においても、礼を尽くす


注釈(簡略)

  • 三師(さんし):太子太師・太子太傅・太子太保の三人。皇太子の教育・補佐を担う重職。
  • 儀注(ぎちゅう):儀礼の作法や順序。政治的・道徳的秩序を形で表現するもの。
  • 惶恐(こうく):恐れかしこまる意。書簡などで最大級の敬意を表す定型表現。
  • 讓(じょう):道を譲る、座を譲るなど、敬意を示す行動の一つ。

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