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厳粛なる師の志は、太子をして頭(こうべ)を垂れさせる

――威儀と敬意が、人を導く

皇太子の補佐役であった李綱(りこう)は、足の病に悩まされながらも、師としての威厳と気概を失わなかった。
太宗は彼を深く尊重し、輿を賜って親衛軍に担がせ、皇太子自らに宮殿へ昇らせて拝礼させた。これほどの礼遇が示されたのは、李綱の人格と教養が群を抜いていたからである。

李綱は、皇太子に対して君臣の道・父子の礼を教え、行儀作法を丁寧に説いた。
その言葉は理にかない、話の筋道が明晰で、聞く者を飽きさせなかった。

ある日、太子が忠義の話を持ち出すと、李綱は厳しくも温かく応えた。
「六尺の孤に国を託すのは難事と言われるが、太子がこのようであれば、綱にとっては容易いことです」

発言のたびに、気迫に満ちて志がぶれず、皇太子ですら自然と背筋を正し、畏敬の念を抱いたという。


引用とふりがな(代表)

「託(たく)するに六尺(ろくせき)の孤(こ)、寄(よ)するに百里(ひゃくり)の命(めい)、古人(こじん)以(もっ)て難(かた)しと為(な)す。綱(こう)以(もっ)て易(やす)しと為す」
――真の師は、重責をも難事としない


注釈(簡略)

  • 李綱(りこう):隋末から唐初に活躍した名臣。皇太子・李建成の補佐役を務め、誠実な指導者として高く評価された。
  • 六尺の孤(ろくせきのこ):幼い皇子や皇帝を指す表現。身長六尺(約1メートル)という意。
  • 百里の命(ひゃくりのめい):一国を任される統治の重責を指す。
  • 懍然(りんぜん):威厳に満ちて厳粛な様子。
  • 慷慨(こうがい):気概あふれる感情や言葉。

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