――親王は皇太子を越えてはならぬ
褚遂良は、魏王・李泰の王府への支給が皇太子を上回っていることに対し、礼に反するとして太宗に諫言した。
皇太子は天子に次ぐ存在として特別の地位にあり、その待遇は礼によって最も重んじられるべきである。
庶子である親王が、それを上回る待遇を受ければ、自然と人心に疑念が生まれ、やがては国を揺るがす火種となる。
たとえどれほど愛していようとも、皇子たちにはそれぞれの定分があり、そこを越えてはならない。
秩序の上にこそ、忠義も孝行も育つ。優遇するよりも、導き育てることこそが親としての本分である。
引用とふりがな(代表)
「庶子(しょし)を愛すといえども、嫡子(ちゃくし)を超えて特に遇(ぐう)するを得ず」
――愛情も秩序の上に立つべきである
「忠・孝・恭・倹(けん)――義方(ぎほう)これなり」
――子を愛すれば義方を教えよ。忠義と倹約を忘れてはならない
注釈(簡略)
- 褚遂良(ちょすいりょう):太宗に仕えた忠直な諫臣。書家としても名高い。
- 嫡子(ちゃくし)と庶子(しょし):嫡子は正室の子で皇太子となる資格を持つ。庶子はそれ以外の子で、原則として皇位継承権は持たない。
- 梁孝王(りょうこうおう)・淮陽王(わいようおう):ともに漢代の庶子で、過度に優遇された結果、混乱や問題を招いた歴史的事例。
- 義方(ぎほう):子に教えるべき道理。忠、孝、恭、倹の四徳を指す。
- 出警入蹕(しゅつけいにゅうひつ):天子と同じく出入りの際に警備隊を従える行動。過剰な権威の象徴。
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