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人は長所をもって任じ、短所を知って備える

—短を責める前に、長を活かせ

貧窮の報告を受けて太宗は、「人材推薦が杜撰だ」と魏徴らを責めた。
これに魏徴は明快に反論する。「我々は人物の長所と短所を明示して評価しています。凌敬は諫言に優れた才を持つが、贅沢を好むのは欠点。しかし、その短所だけを見て評価を否定されては、公正な判断はできません」と。

太宗はこれを聞いて納得し、「評価とは全体を見て為すべきもの」と理解した。


原文(ふりがな付き引用)

「臣等(しんとう)毎(つね)に蒙(こうむ)りて問(と)わるれば、常(つね)に其(そ)の長短(ちょうたん)を言(い)う。
有(あ)り学識(がくしき)、強(し)いて諫諍(かんそう)するは、是(これ)其(そ)の長(ちょう)なり。
生活(せいかつ)を愛(あい)し、経営(けいえい)を好(この)むは、是(これ)其(そ)の短(たん)なり。
今(いま)凌敬(りょうけい)は人(ひと)の為(ため)に碑文(ひぶん)を作(つく)り、『漢書(かんじょ)』を読(よ)むを教(おし)え、茲(これ)に因(よ)りて附託(ふたく)し、回易(かいえき)して利(り)を求(もと)む。
これ臣等(しんとう)の評(ひょう)とは同(おな)じからず。
陛下(へいか)、未(いま)だ其(そ)の長(ちょう)を用(もち)いず、惟(た)だ其(そ)の短(たん)を見(み)て、以(もっ)て臣等(しんとう)を欺罔(ぎもう)と為(な)すは、実(じつ)に心(こころ)より伏(ふく)せず」


注釈

  • 長短(ちょうたん):人物の能力と欠点。全面的な評価を意味する。
  • 附託(ふたく)/回易(かいえき):口利きや金銭絡みの斡旋をする行為。政治倫理上の問題視対象。
  • 欺罔(ぎもう):欺くこと。事実を歪める・虚偽とみなされること。
  • 心服(しんぷく):納得して従うこと。形式的でなく真に受け入れる心の状態。

教訓の核心

  • 人材登用は「一を見て十を断ず」ではなく、長所を用い、短所を知ることにある。
  • 評価する者の信頼は、単に成果ではなく、正直な報告と判断の中にある。
  • 欠点を理由にすべてを否定すれば、どんな優れた者も任用できなくなる。
  • 君主は、部下の推薦を信じつつ、用い方を誤らないことが肝要である。
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