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心が定まるまでは、欲望に近づかない

自分の判断力や心の安定がまだ確立していないうちは、
俗世間――人の欲や騒がしさが満ちる場所――から距離を置くのが賢明だ。

欲望をかき立てるものを見ないようにして、心を乱さず、本来の静かな心を磨く。
そうして不動の心ができあがれば、今度はあえて世間に飛び込んで、多くの人々と交わるとよい。

そこでは、たとえ欲を誘うものを目にしても心は揺るがず、
逆に人と関わることで、自分の人格に“まるみ”や柔軟性を備えていけるようになる。

修養とは、「遠ざける」と「関わる」の両面を時に応じて使い分けることにある。


原文とふりがな付き引用

把握(はあく)未(いま)だ定(さだ)まらざれば、宜(よろ)しく迹(あと)を塵囂(じんごう)に絶(た)つべく、
此(こ)の心(こころ)をして可(よ)く欲(ほっ)すべきを見(み)ずして乱(みだ)れざらしめ、以(もっ)て吾(わ)が静体(せいたい)を澄(す)ます。
操持(そうじ)既(すで)に堅(かた)ければ、又(また)当に迹を風塵(ふうじん)に混(ま)ずべく、
此の心をして可欲(かよく)を見て亦(また)乱れざらしめ、以て吾が円機(えんき)を養(やしな)う。


注釈

  • 把握未だ定まらざれば:自分の心をコントロールできる段階に至っていないならば。
  • 塵囂(じんごう):俗世間。騒がしい世界。
  • 静体(せいたい):本来の静かで純粋な心。心の本質。
  • 操持(そうじ):信念や意志をしっかりと保つこと。内面の力。
  • 風塵(ふうじん):世の中のまっただなか。人の交わる社会。
  • 円機(えんき):円満な人格、柔軟で円滑に対応する知恵や働き。

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