MENU

自分を中心に据えれば、すべては自由になる

自分の人生の主役は自分であり、
外の出来事や環境、周囲の反応は、あくまでそれに付随する脇役にすぎない――
そう考えられる人は、成功しても大いに喜ぶことはなく、
失敗しても、くよくよ悩むこともない。

どんな状況であれ、大地を悠々と歩むように、
自分のリズムでのびのびと生きることができる。

反対に、自分の主体性を失い、
まわりのものに支配され、ふり回されてしまう人は、
苦しい時には他人や環境を恨み、
順調な時にはそこに執着してしまう。

そして最後には――
たった一本の毛のような、些細なことにすら縛られ、
身動きがとれなくなってしまうのだ。

「我(われ)を以(も)って物(もの)を転(てん)ずる者(もの)は、得(う)るは固(もと)より喜(よろこ)ばず、失(うしな)うも亦(また)た憂(うれ)えず、大地(だいち)も尽(ことごと)く逍遥(しょうよう)に属(ぞく)す。物(もの)を以って我(われ)を役(えき)する者は、逆(ぎゃく)は固(もと)より憎(にく)しみを生(しょう)じ、順(じゅん)も亦た愛(あい)を生ず。一毛(いちもう)も便(すなわ)ち纏縛(てんばく)を生ず。」

本当に自由な人生とは、
何があっても「自分が自分であること」を手放さない生き方。
状況に左右されず、心を執着や反発に染めず、
ただ淡々と、自分の歩幅で生きていけばいい。
人生の舞台に立つのは、他の誰でもない「あなた」自身なのである。


※注:

  • 「転ずる」…他の物や状況を自分の意思で扱い、従わせること。主体的に生きること。
  • 「逍遥(しょうよう)」…のびのびと自由に歩くさま。束縛されない人生。
  • 「一毛」…一本の毛のように些細な事柄。取るに足らぬこと。
  • 「纏縛(てんばく)」…束縛され、自由を失うこと。
  • ※本条は『菜根譚』の中でもとりわけ現代的な主張が見られる箇所であり、
    ジャン=ポール・サルトルの実存主義に通じる思想とも解釈できる。

1. 原文

以我轉物者、得固不喜、失亦不憂、大地盡屬逍遙。以物役我者、逆固生憎、順亦生愛、一毛便生纏縛。


2. 書き下し文

我(われ)を以(もっ)て物(もの)を転(うご)かす者は、得(う)るは固(もと)より喜(よろこ)ばず、失(うしな)うも亦(また)憂(うれ)えず、大地(だいち)も尽(ことごと)く逍遥(しょうよう)に属(ぞく)す。
物を以て我を役(えき)する者は、逆(ぎゃく)は固より憎(にく)しみを生じ、順(じゅん)も亦た愛(あい)を生じ、一毛(いちもう)も便(すなわ)ち纏縛(てんばく)を生ず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「自分の心で物事を動かす者は、手に入れても喜ばず、失っても憂えない。世界のすべてが心のままの自由になる」
     → 主体性をもって生きる人は、得失に心を乱されず、どこにいても自由でいられる。
  • 「逆に、物によって心を支配される者は、不都合なことには憎しみが湧き、うまくいっても執着が生まれる。一すじの毛ほどの些細なことでも、心は束縛されてしまう」
     → 外界の状況に依存して生きている人は、どんなことでも感情に振り回され、自由を失ってしまう。

4. 用語解説

  • 我を以て物を転ずる:「主体性をもって状況を動かすこと」。自分が物事の中心である意識。
  • 得固不喜、失亦不憂:得ても喜ばず、失っても悲しまない=平常心・達観。
  • 逍遥(しょうよう):心が自由で、何ものにも縛られないさま。気ままに歩き回ること。
  • 物を以て我を役する:物質的条件や環境に自分が支配されていること。外的依存。
  • 逆・順:物事の順調/不調、都合が良い/悪いという状況。
  • 一毛(いちもう):一本の毛。ほんのわずかなこと。些細な刺激。
  • 纏縛(てんばく):からみついて縛ること。束縛されること。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

自分の意志で物事を動かす人は、物を得てもそれに舞い上がらず、失っても沈まず、世界のどこにいても自由でいられる。
一方で、外部のものに心を支配される人は、都合が悪ければ憎しみ、順調でも執着し、たとえ一本の毛のように小さなことでも、心はすぐに縛られてしまう。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、“主体性”と“依存”の対比を通じて、心の自由の本質を問うています。

  • 主体的な人は、「所有しても心が揺れず」「失っても心が沈まない」。まさに「持たずして豊か」「無一物にして自在」。
  • 一方、他人や環境、評価、モノに心を支配されると、人はすぐに一喜一憂し、自由を見失う。

つまり、**真の自由とは「心がどこにも引きずられない状態」**にある。禅や道家にも通じるこの思想は、現代においてもストレスマネジメントや幸福論として有効です。


7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「成果」や「評価」に心を預けるな

KPIや売上が上がっても慢心せず、下がっても落ち込まず、「自分の意志で進んでいるか」が重要。
外的要因に振り回される働き方は、メンタルを崩す元。

✅ 「自律性」が最大の資産である

目の前の状況を「どう扱うか」は自分次第。自分の意志で選び、動く人は、環境の変化にも強く、ぶれない。

✅ 些細なことに反応しすぎると、自由は失われる

SNSの評価や他人の言動に過敏になれば、たちまち“縛られた生き方”になる。
一毛の刺激に縛られぬ、広い心を育てることが、真に信頼される人間の条件。


8. ビジネス用の心得タイトル

「心を外に預けるな──自ら物を動かす者こそ真の自由人」


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次