名誉を得ても、恥を受けても、心を乱さずにいられること。
それはまるで、庭先に咲いては散る花を、ただ静かに見つめているような心のあり方である。
地位や立場にとどまるか、そこから離れるかも気にしない。
それはちょうど、空に浮かぶ雲が、巻いたり伸びたりしながら、何にもとらわれずに自由に漂っているようなもの。
外からの評価や境遇に振り回されず、ただ自然体で、泰然として在る――
それが、真に自由で安らかな生き方なのだ。
「寵辱(ちょうじょく)、驚(おどろ)かず。間(かん)に庭前(ていぜん)の花(はな)開(ひら)き花落(お)つるを看(み)る。去留(きょりゅう)、意(い)無(な)く、漫(そぞ)ろに天外(てんがい)の雲(くも)巻(ま)き雲舒(の)ぶるに随(したが)う。」
人は、評価や結果に一喜一憂することなく、
自然の変化に身を任せるように、淡々と自分の道を歩めばよい。
※注:
- 「寵辱(ちょうじょく)」…寵(ほうび)=名誉、辱(じょく)=恥辱。人からの称賛や非難。
- 「寵辱、驚かず」…名誉にも恥にも心を動かさないという態度。『老子』にも「寵辱に驚くが若し」とあり、それを乗り越えるには「身(しん)に執着しないこと」が必要とされる。
- 「花開き花落つるを看る」…開花も落花も自然の流れとして受け入れる心象。
- 「雲巻き雲舒ぶるに随う」…雲が巻いたり伸びたりする様子に身を任せるように、無為自然の境地を表す。
コメント