口というものは、心の内にある思いや秘密が外に出る「門」である。
だからこそ、口を慎まず、言葉を軽んじるならば、大切な真意や秘めた思考を、知らぬ間に漏らしてしまう。
不用意な言葉は、信頼を損ない、機会を失わせる危険を伴う。
「沈黙は金」という言葉のように、慎み深い口こそが、心の奥を護る鍵である。
また、意識や思考は、心がどの方向へ進むかを決定づける「足」である。
だから、もしこの意識を放任し、思いつくままに心をさまよわせれば、知らぬ間に正道から逸れて、邪道に踏み込むことになる。
つまり、考えや感情の方向づけを怠れば、人生そのものの方向を誤る可能性があるということだ。
この心得は、言葉と想念を制する者が、心を制し、人生を正しく導くことができるという、深い内省の教えである。
原文と読み下し
口(くち)は乃(すなわ)ち心(こころ)の門(もん)なり。口を守(まも)ること密(みつ)ならざれば、真機(しんき)を洩(も)らし尽(つ)くす。
意(い)は乃ち心の足(あし)なり。意を防(ふせ)ぐこと厳(げん)ならざれば、邪蹊(じゃけい)を走(はし)り尽くす。
注釈
- 口は心の門:言葉は心の内容を外に伝える唯一の通路。ゆえに慎重に扱うべし。
- 真機(しんき):心の奥に秘めた真意や洞察。他人に知られてはならない機微。
- 意は心の足:心の向かう方向を決めるのが「意識」。これが逸れれば人生も逸れる。
- 邪蹊(じゃけい):本筋から外れた道。誤った考え・行動・誘惑など。
パーマリンク(英語スラッグ)案
- guard-your-mouth-and-mind(口と意識を守れ)
- words-reveal-heart(言葉は心を明かす)
- thoughts-lead-paths(意識が道を決める)
この心得は、特に情報が溢れ、発信が容易になった現代にこそ重要な教えです。
口を慎まず、意識を放置すれば、心の奥を守れず、道を誤ることにもなりかねません。
「語る前に心を見つめ、考える前に方向を定める」──それが、賢く生きる者の第一歩です。
1. 原文
口乃心之門。守口不密、洩盡眞機。
意乃心之足。防意不嚴、走盡邪蹊。
2. 書き下し文
口は乃(すなわ)ち心の門なり。口を守ること密ならざれば、真機(しんき)を洩(も)らし尽くす。
意(い)は乃ち心の足なり。意を防ぐこと厳ならざれば、邪蹊(じゃけい)を走り尽くす。
3. 現代語訳(逐語・一文ずつ訳)
一文目:
口は心の門である。
→ 口とは、心の中が出入りする門のようなものだ。
口を密に守らなければ、真意や秘めた考えをすべて漏らしてしまう。
→ 無意識のうちに大切な思いや秘密まで喋ってしまう。
二文目:
意は心の足である。
→ 意(思いや欲)は、心を運ぶ“足”のようなものである。
その意志や欲望を厳しく制御しなければ、誤った道(邪道)に進み尽くしてしまう。
→ 油断すると、心が良くない方向へ暴走する。
4. 用語解説
- 口乃心之門:口は心の出入り口である。言葉が心の状態を表す。
- 守口不密(しゅこうふみつ):口を慎まないこと。話しすぎ、秘密漏洩。
- 眞機(しんき):真実の意図、核心、本質。
- 意乃心之足:意志・思考・欲望は、心を行動に向かわせる“足”であるという比喩。
- 防意不嚴(ぼういふげん):欲望や考えをしっかり制御できていない状態。
- 邪蹊(じゃけい):正しくない道、道を外れた行為・思考。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
口は心の門であり、これを慎まなければ、心の奥に秘めていた真実や本質的な考えをすべて無意識に洩らしてしまう。
また、意志や欲望は心を導く足のようなもので、これを厳しく律していなければ、正しい道を外れて、誤った方向へ突き進んでしまう。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、「言葉」と「思い(欲)」という、行動の入口にあたる二つの領域を制御する重要性を説いています。
- 口(ことば)を制することは、自身を守ること
→ 無用な発言は、信頼を失い、機密やチャンスを台無しにする。 - 意(こころの足)を制することは、行動の暴走を防ぐこと
→ 欲や妄想を抑えられなければ、人は簡単に道を踏み外す。
つまり、外に出る言葉と、内に動く意志の管理こそが、心を正しく保ち、人生の方向を誤らせない鍵であるという、内外両面の修養の教えです。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
●「不用意な発言が信頼を壊す」
職場での言葉は、時に評価や信用を一瞬で壊す。特に上位者や情報を扱う立場の人は“口の管理”が極めて重要。
●「秘密・戦略・構想は“出すタイミング”を誤るな」
まだ確定していない構想や、重要な交渉材料をうっかり漏らせば、交渉力・信頼を大きく損なう。口は“戦略の門”でもある。
●「欲望や焦りが“誤った選択”を生む」
営業や経営判断で“焦り”や“打算”が先行すると、道を誤る。内なる意志を厳しく律し、「冷静な選択」を保つことがリーダーの資質。
●「自己規律が“言葉”と“判断”を洗練させる」
口と意を律することは、最終的に“信頼される人格”と“ぶれない判断力”をもたらす。日々の節制こそが、長期的成果の鍵。
8. ビジネス用の心得タイトル
「口は心の門、意は心の足──“語る慎み・思う節制”が信頼と誤らぬ道を守る」
この章句は、現代においても通じる**「セルフマネジメントと情報管理の核心」**を鋭く突いています。
マネジメント研修・リーダー育成・情報倫理教育などの教材としても活用できる一節です。
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