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誠と正義をもって接すれば、どんな人も感化できる

うそをついて人をだまそうとする者に出会ったなら、こちらは誠実な心をもって接し、その心を動かし、改心させたい。
乱暴で手がつけられないような者には、あえてやわらかな和やかな気持ちで接し、ゆっくりと温めるように感化したい。
心がねじれて私利私欲に走るような人物には、こちらの正義と気概をもって、真っ向からぶつかり、鼓舞したい。

そうして世の中のあらゆる人間は、いわば自分が陶冶(とうや)=感化・育成していく対象である。
つまり、自分の心構えと行動次第で、世界は変えられるという信念に満ちた一節である。

これは『論語』で孔子が語る「己を脩めて以て人を安んず」にも通じており、
まず自らが徳を養うことによって、まわりをも自然と良い方向へ導く、という道徳的理想の体現とも言える。


原文(ふりがな付き)

「欺詐(ぎさ)の人(ひと)に遇(あ)わば、誠心(せいしん)を以(も)って之(これ)を感動(かんどう)し、
暴戻(ぼうれい)の人に遇わば、和気(わき)を以って之を薫蒸(くんじょう)し、
傾邪私曲(けいじゃしきょく)の人に遇わば、名義気節(めいぎきせつ)を以って之を激礪(げきれい)す。
天下(てんか)、我(わ)が陶冶(とうや)の中に入(い)らざること無し。」


注釈

  • 欺詐の人:嘘やごまかしで人を操ろうとする者。
  • 暴戻の人:乱暴で手がつけられない、荒々しい性質の者。
  • 薫蒸(くんじょう):やわらかく包み込むように感化し、変化を促すこと。
  • 傾邪私曲の人:心が曲がり、正義より私利私欲を優先する人。
  • 名義気節:道義にかなった行動や高い志、揺るがぬ精神。
  • 陶冶(とうや):人を鍛え、育てること。陶芸や鋳物のように形を整える比喩。

パーマリンク候補(英語スラッグ)

  • transform-through-character(人格で感化する)
  • everyone-is-influencable(すべての人は感化できる)
  • mold-the-world-with-virtue(徳をもって世界を陶冶せよ)

この条は、ただの理想論ではなく、「まずは自分の姿勢から始める」という実践的で主体的な徳の教えです。
他人を変えるために怒ったり押し付けたりするのではなく、誠・和・正義をもって相手に自然と影響を与えていく――
それは真に成熟した人格者の姿でもあります。

1. 原文

欺詐之人、以誠心感動之。
暴戾之人、以和氣薰蒸之。
傾邪私曲之人、以名義氣節激礪之。
天下、無不入我陶冶中矣。


2. 書き下し文

欺詐(ぎさ)の人に遇(あ)わば、誠心(せいしん)を以(もっ)て之(これ)を感動(かんどう)し、
暴戾(ぼうれい)の人に遇わば、和気(わき)を以て之を薫蒸(くんじょう)し、
傾邪(けいじゃ)私曲(しきょく)の人に遇わば、名義(めいぎ)氣節(きせつ)を以て之を激礪(げきれい)す。
天下、我(われ)が陶冶(とうや)の中に入(い)らざること無し。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ訳)

  • 「人を欺き騙すような者には、まごころをもって接し、その心を動かすべきである」
     → 不誠実な相手にこそ、誠実さをもって感化する。
  • 「粗暴で乱暴な者には、穏やかな気で包み込み、静かに和らげるべきである」
     → 攻撃的な相手には、対抗せず、むしろ柔らかい態度でその荒々しさを溶かす。
  • 「私利私欲にまみれ、偏った人間には、名誉・正義・節操をもってその心を奮い立たせるべきである」
     → 利己的な者には、気高さと公正さによって触発し、道を示す。
  • 「このようにすれば、天下に私の影響を受けない者はいなくなる」
     → 誠・和・義の心で人を導くことができれば、誰でもその感化に浴することができる。

4. 用語解説

  • 欺詐(ぎさ):人をだますこと。不正直・虚偽。
  • 暴戾(ぼうれい):乱暴で残忍な性質。暴力的で無法な気性。
  • 傾邪私曲(けいじゃしきょく):偏り・私利・不正を重ねた人格。
  • 名義氣節(めいぎきせつ):名誉、正義、気骨、節操などの高潔な精神。
  • 薫蒸(くんじょう):香りをもって包み込むように影響を与えること。穏やかに感化する様。
  • 激礪(げきれい):刺激を与え、研ぎ澄ますこと。感化し、向上させる。
  • 陶冶(とうや):人の性格や精神を育て、鍛えること。教育・感化の意。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

人を騙すような不誠実な人物には、まごころで感動を与えるべきであり、
暴力的な人物には、穏やかな気で優しく包み込むように接するべきである。
利己的で偏った人物には、名誉や正義、気骨ある精神で触発すべきだ。

このように、相手に応じた徳をもって接すれば、誰もが私の人格的感化により導かれ得る──
世界には、感化できない者などいないのだ。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「人を変えるのは力ではなく、徳である」**という信念に貫かれています。

  • 不正に対しては誠を。
  • 暴力に対しては和を。
  • 利己に対しては義を。

これは単なる理想主義ではなく、「相手の性質に応じた最も効果的な徳の使い方」という、**実践的な“人心掌握術”**です。

「反発」ではなく「感化」、「対立」ではなく「調和と誘導」を通じて、自他ともに高める人間関係の知恵がここにあります。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

●「信頼は誠実さから始まる──不正への対抗策は“誠”」

  • 不透明な商談やごまかしの多い現場には、誠実な行動で信頼を築き直すのが最善。
  • 正直に、損得勘定抜きで動く姿勢が、周囲の態度を変えるきっかけになる。

●「怒りや暴言に対しては、怒りで返すな──“和気”で包みこむ」

  • 攻撃的なクレームや内部の対立にも、冷静で穏やかな対応が最も効果的。
  • “強く優しく”が、真のリーダーシップ。

●「利己的・打算的な人材には、高潔な理念で訴えよ」

  • 目先の利益だけで動く人には、理念や使命、名誉のような“大義”を語ることで行動を促す。
  • 「利益」より「誇り」を軸にしたコミュニケーションが効果的。

8. ビジネス用の心得タイトル

「徳で人を包む──誠・和・義が心を変える力となる」


この章句は、**「人格の感化力」**という、リーダーシップや人間関係の本質を突いています。

力ではなく、人としての在り方が人を動かす。
“誠実さ・調和・大義”──この三つの徳こそが、どんな相手でも変え得る鍵であり、
それらをもって接する人のもとに、人は自然と集い、変化し、成長するのです。

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