MENU

小さな油断が大きな禍を招く ― 細部にこそ心を尽くせ

たった一度の軽率な思いつきや、無意識のひと言、何気ない行動が、思いがけない大きな禍を引き起こすことがある。
それは、目に見えない神仏の怒りを買い、天地の調和を乱し、時には子孫にまで災いを及ぼすことさえあるという。
だからこそ、どんなに小さなことでも、軽んじてはならない。
「このくらいは大丈夫」と思った瞬間にこそ、最も強く自らを戒めるべきだ。

現代にも通じるこの教えは、佐藤一斎が説いた「遠慮ある者は、細事を忽にせず」や、アビ・ヴァールブルクの言葉「神は細部に宿る」と響き合っている。
細心の注意は、真の誠実さと遠い未来への責任の証である。


原文(ふりがな付き)

「一念(いちねん)にして鬼神(きしん)の禁(きん)を犯(おか)し、
一言(いちげん)にして天地(てんち)の和(わ)を傷(そこ)ない、
一事(いちじ)にして子孫(しそん)の禍(わざわ)いを醸(かも)す者(もの)有(あ)り。
最(もっと)も宜(よろ)しく切(せつ)に戒(いまし)むべし」


注釈

  • 一念(いちねん):ふとした出来心、つい…という軽い気持ち
  • 鬼神(きしん)の禁:神仏の掟・道理を破ること。目に見えぬ天の理。
  • 天地の和:自然界や人と人との調和。宇宙の秩序。
  • 子孫の禍い:一時の過ちが、長く続く家系にまで悪影響を及ぼすこと。
  • 切に戒む:真剣に自戒し、注意深くあれ。

パーマリンク候補(英語スラッグ)

  • mind-the-small(小さなことにこそ心を)
  • details-hold-destiny(細部に宿る運命)
  • small-mistakes-big-costs(小さなミスが大きな代償に)

1. 原文

有一念而犯鬼神之禁、一言而傷天地之和、一事而釀子孫之禍者。最宜切戒。


2. 書き下し文

一念にして鬼神の禁を犯し、一言にして天地の和を傷り、一事にして子孫の禍を醸す者あり。最も宜しく切に戒むべし。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「一念にして鬼神の禁を犯し」
     → たった一つの邪念でも、鬼神の戒め(道徳や天理)に反することがある。
  • 「一言にして天地の和を傷り」
     → たった一言の軽率な言葉が、天地自然の調和や人間関係のバランスを壊してしまうことがある。
  • 「一事にして子孫の禍を醸す者あり」
     → たった一つの行動が、後々の世代にまで災いをもたらす場合もある。
  • 「最も宜しく切に戒むべし」
     → こうしたことは、何よりも強く戒めるべきである。

4. 用語解説

  • 一念(いちねん):ふと心に浮かぶ一つの思い。瞬間的な内面の動き。
  • 鬼神(きしん)の禁:神仏や自然の道理が定めた禁忌・戒め。道徳的・天罰的な枠組み。
  • 天地の和(てんちのわ):自然界や社会における調和・バランス・秩序。
  • 釀(かも)す:発酵させるの意から派生して「引き起こす」「もたらす」。
  • 切戒(せっかい):切実に戒めること。特に慎重に避けるように強く勧める態度。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

たった一つの邪念が、神仏の戒めに触れることがあり、たった一言が自然界の調和を乱すことがある。たった一つの行動が、未来の子孫に災いをもたらすこともある。だからこそ、こうした一念・一言・一事には、何よりも慎重でなければならない。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「わずかな心の緩み」「軽はずみな言葉」「短慮な行動」が取り返しのつかない結果を招くことを戒めています。

儒仏道の三教に通じる『菜根譚』らしく、個人の内面と宇宙の秩序、子孫に及ぶ因果の連鎖という、東洋思想の核心を端的に表しています。

つまり、目に見えない因果応報小さな契機の大きな影響力を知り、**慎独(誰も見ていなくても自律する態度)**を持つべきだ、というメッセージです。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

●「一念」がリーダーの判断を狂わせる

  • 一瞬の怒り、油断、嫉妬といった感情に流されて判断を下すと、倫理的にも戦略的にも誤る。
  • 例:パワハラ発言や過剰な責任転嫁などは「一念」の暴走。

●「一言」が組織の信頼関係を崩壊させる

  • 無意識の差別的発言、上司の不用意な一言、顧客との信頼を壊す発言。
  • 例:「どうせ無理だろ」といった言葉は、チームの士気を一瞬で冷やす。

●「一事」が企業の将来を左右する

  • 単独の不正会計、データ改ざん、誤配送など、初動の誤りが企業の存続を危うくする。
  • 例:SNS投稿一つでブランド価値が急落するなど、「一事」の影響力は予想以上。

8. ビジネス用の心得タイトル

「一念・一言・一事に命運あり──慎重さが信頼を守る力となる」


この句は、「細部こそがすべてを決める」という原則を、精神的・倫理的次元で教えてくれるものです。日々の仕事の中で、ほんの些細なことが大局を動かす契機になる。その重みを知ることが、真のプロフェッショナリズムへの第一歩です。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次