人を責める人は、すべてを凶器に変えて衰えていく。
自分を反省できる人は、
どんな経験や失敗に出会っても、**それを自分を高める「薬石（やくせき）」**とすることができる。
反対に、人のせいにばかりして他人を責める人は、
どんな思考・感情も、**やがては自分自身を傷つける「戈矛（かぼう）＝武器」**に変わっていく。
自分を省みる者は、そこから多くの善を見出し、人生の道が次々と開けていく。
人を責める者は、あらゆる悪の種を深く根づかせていき、行き詰まりを深めていく。
この両者の違いは――まさに“霄壌（しょうじょう）＝天と地”ほどにも大きい。
原文（ふりがな付き）
己（おのれ）を反（かえり）みる者（もの）は、事（こと）に触（ふ）れて皆（みな）薬石（やくせき）と成（な）る。人（ひと）を尤（とが）むる者は、念（おも）いを動（うご）かせば即（すなわ）ち是（こ）れ戈矛（かぼう）なり。一（いち）は以（もっ）て衆善（しゅうぜん）の路（みち）を闢（ひら）き、一は以て諸悪（しょあく）の源（みなもと）を濬（ふか）くす。相（あい）去（さ）ること霄壌（しょうじょう）なり。
注釈
- 薬石（やくせき）：良薬や治療の石の意。ここでは「人を成長させる糧」「経験から得る教訓」を指す。
- 戈矛（かぼう）：古代中国の武器。ここでは「他人を攻撃し、自らをも傷つけるもの」の比喩。
- 衆善の路を闢く（しゅうぜんのみちをひらく）：多くの善へと通じる道を切り開くこと。人格の向上。
- 諸悪の源を濬くす（しょあくのみなもとをふかくす）：悪しき心根や行動をより深く、根深いものにしていくこと。
- 霄壌（しょうじょう）：天と地ほどの差。雲泥の差。
※『論語』の曾子は「吾は日に三たび吾が身を省みる」と述べ、また孔子も「過ちては則ち改むるに憚ること勿かれ」と説いています。
西洋ではベンジャミン・フランクリンが『自伝』で、13の徳目を日々反省して手帳に記録する修養法を実践し、世界中に影響を与えました。
パーマリンク（英語スラッグ）
growth-through-self-reflection（反省が成長をもたらす）blame-wounds-reflection-heals（責める者は傷つき、省みる者は癒される）the-gap-between-blame-and-growth（責任転嫁と内省の間にある天と地）
この条文は、学び・成長・人間力の根源は「反省」にあることを、非常に明快に説いています。
他人に責任を押しつける人は、感情のたびに「怒り」や「攻撃性」によって自分を傷つけ、
やがて人生そのものが苦しみの温床になっていきます。
反対に、自分の内側に目を向けられる人は、
同じ失敗からも教訓を得て、成長し、善の道がどんどん広がっていく。
成長とは、「自己責任」の受け入れから始まる――
そのことを、鮮やかに言い当てたのがこの条文なのです。
1. 原文
反己者，觸事皆藥石。
尤人者，動念卽是戈矛。
一以闢衆善之路，一以濬諸惡之源。
相去霄壤矣。
2. 書き下し文
己を反みる（かえりみる）者は、事に触れて皆、薬石（やくせき）となる。
人を尤（とが）むる者は、念を動かせば、即ち是れ戈矛（かぼう）なり。
一は以て衆善の路を闢（ひら）き、
一は以て諸悪の源を濬（ふか）くす。
相去ること霄壌（しょうじょう）なり。
3. 現代語訳（逐語／一文ずつ）
- 自分自身を反省する者にとっては、どんな出来事もすべて自分を鍛える良薬・良き助言となる。
- 他人を責める者にとっては、心に浮かぶその思いがすでに争いの武器となっている。
- 前者は、多くの善い道を開くことができ、
- 後者は、あらゆる悪の源を深めてしまう。
- その差は、天と地ほどもあるのだ。
4. 用語解説
- 反己（はんき）：自らを省みること。反省・内省。
- 薬石（やくせき）：病を治す薬や石。ここでは「自己を正す助け」としての比喩。
- 尤人（ゆうじん）：他人の過ちを責めること。
- 戈矛（かぼう）：武器。怒り・対立・争いの象徴。
- 闢（ひらく）：開拓する、道を開く。
- 濬（ふかく）す：深める。ここでは「悪の根を深くする」の意味。
- 霄壌（しょうじょう）：天と地、非常に大きな差異を表す比喩。
5. 全体の現代語訳（まとめ）
自らを省みる人にとっては、どんな出来事も自分を成長させる薬や助けとなる。
逆に、他人の非ばかりを責めている人にとっては、思いがけず心が争いの武器に変わってしまう。
前者は善の道を開き、後者は悪の根を深める──この差は、まるで天と地ほどに大きい。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、自己反省と他者批判という二つの態度の違いが、人生にいかに大きな結果の差をもたらすかを強調しています。
● 「反省する人」は学びを積み重ねる
- どんな困難やミスも、「自分の糧」に変えることができる。
→ その人は、常に成長の中にいる。
● 「人を責める人」は争いを生む
- 他人の粗探しに心を使えば、自然と対立や敵意が生まれ、環境も荒れる。
→ 心の中に「戈矛（武器）」を持つようなもの。
● 行動の起点が「反己」か「尤人」かで、未来が変わる
- 内省は人格を磨き、
- 批判は関係を壊し、信頼を失う。
→ この違いは、**天と地ほどの差（霄壌）**に等しい。
7. ビジネスにおける解釈と適用（個別解説付き）
● 自省を基本とする組織文化の重要性
- 成果や失敗に対して「自分にできる改善は？」と考える姿勢は、学習型組織の基礎。
→ 他責文化（人を責める風土）は、成長も信頼も損なう毒。
● フィードバックは「攻撃」ではなく「気づきの機会」
- 他人のミスを責めるのではなく、「そこから何を学べるか？」という視点が大切。
→ 建設的なフィードバック文化を育てるには、まず自分が反己を実践することから。
● リーダーほど、まず「自分に問いを向ける」
- トラブルのとき、「自分のマネジメントに落ち度はなかったか？」と問える人が、
→ 信頼されるリーダーであり、組織の善を開く者である。
8. ビジネス用の心得タイトル
「反省は成長を導き、批判は争いを生む──“自らを問う姿勢”が未来を拓く」
この章句は、「他責ではなく自責の姿勢こそが、人間的・組織的成熟の鍵である」ことを明確に示しています。
“己を反みる者は、すべての出来事を善に転じる力を持つ”──
まさに現代のビジネスパーソンに最も求められる思考態度です。
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