士君子(しくんし)――高潔な人・志ある人であっても、
ときに貧しくて、他人を物質的に助ける余裕がないことがある。
しかし、たとえば――
- **愚かで道を誤っている人(痴迷)**に出会ったとき、
ただ一言でその迷いを覚まさせることができる。 - 苦境や危難の中にいる人に出会ったとき、
ただ一言で心を救い、希望を取り戻させることができる。
こうした**「言葉による助け」こそ、無限の功徳を生む行いであり、
たとえ財を持たずとも、誰もが行える最も尊い社会貢献**である。
原文(ふりがな付き)
士君子(し くんし)は貧(まず)しきにして物(もの)を済(すく)うこと能(あた)わざる者なるも、人(ひと)の痴迷(ちめい)の処(ところ)に遇(あ)いては、一言(いちげん)を出(い)して之(これ)を提醒(ていせい)し、人の急難(きゅうなん)の処に遇いては、一言を出して之を解救(かいきゅう)す。また是(こ)れ無量(むりょう)の功徳(くどく)なり。
注釈
- 士君子(し くんし):品格と志をもった人物。徳を修める人。
- 物を済う(ものをすくう):金銭や物質的手段で人を助けること。
- 痴迷(ちめい):愚かさや迷いによって道を誤っている状態。
- 提醒(ていせい):目を覚まさせる。気づかせる。
- 急難(きゅうなん):突発的な苦難・危機的状況。
- 解救(かいきゅう):助け出す。解き放つ。
- 無量の功徳:はかりしれない善行・精神的報い。仏教語。
※アメリカの思想家ラルフ・ウォルド・エマーソンは「心の奥底に達してあらゆる病を癒す音楽――それは温かい言葉だ」と述べています。
まさに、言葉には金銭以上の力があるという点で、本項の教えと完全に響き合っています。
パーマリンク(英語スラッグ)
words-as-acts-of-merit
(言葉もまた功徳)save-with-speech
(言葉で救う)speak-to-heal
(癒しの言葉を届ける)
この条文は、**「物を持たなくとも人を救える」**という、希望に満ちた教えです。
私たちはつい、「助ける=金銭的支援」と思い込みがちですが、
正しいときに、正しい言葉をそっとかけること――それは相手の人生を変える力を持っています。
「言葉」は誰でも持てる資源であり、
だからこそ、心のこもった一言が“最大の施し”になるのです。
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