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短所は包み、頑固さは導く ― 人を責めず、育てる態度を

人の短所に気づいたとき、それをあからさまに指摘して傷つけるのではなく、
やさしく丁寧にフォローし、うまくつくろってやることが大切である。

もし、相手の欠点をそのまま暴いてしまえば、
それは自分の短所で相手の短所を攻めるようなもので、何の成長ももたらさない。

また、頑固な人に対しては、感情的にならず、上手に導き、さとす工夫が必要である。
こちらが怒ってぶつかってしまえば、頑固さが頑固さを呼び、かえって対立を深めるだけである。

責めるより、包む。突くより、導く。
そのような姿勢こそ、人間関係を育て、自分自身の品格を高めていく道となる。


原文(ふりがな付き)

人(ひと)の短處(たんしょ)は、曲(きょく)さに弥縫(びほう)を為(な)すを要(よう)す。如(も)し暴(あら)わしてこれを揚(あ)ぐれば、是(こ)れ短(たん)を以(もっ)て短を攻(せ)むるなり。人の頑(がん)ある的(てき)は、善(よ)く化誨(けいかい)を為すを要す。如し忿(いか)りてこれを疾(にく)まば、是れ頑を以て済(す)すなり。


注釈

  • 曲さに弥縫を為す:「弥縫(びほう)」とは繕う・補うという意。相手の短所を柔らかく補い、体面を保たせる配慮。
  • 短を以て短を攻む:自分にも短所があるのに、他人の短所をあからさまに攻撃してしまうこと。互いに傷つけ合うだけになる。
  • 頑ある的:頑固な性質を持つ人。
  • 化誨(けいかい):感化し、教え導くこと。穏やかな説得。
  • 忿りてこれを疾まば:怒って相手を嫌い、敵対すること。
  • 頑を以て済す:自分の頑固さで、相手の頑固さをさらに助長してしまう状態。

パーマリンク(英語スラッグ)

  • correct-with-kindness(やさしく正す)
  • temper-tames-temper(穏やかさが頑固を和らげる)
  • guide-don’t-condemn(責めるより導く)

この条文は、人間関係における最も繊細な部分――**「相手の欠点への対処」**において、
感情ではなく誠意と知恵で接することの重要性を説いています。

他者の過ちや未熟さに直面したとき、私たちは「裁く者」ではなく「育てる者」であるべきだという、
深い慈しみと人間理解に満ちた教えです。

目次

1. 原文

人之短處、曲為彌縫。如暴而揚之、是以短攻短。
人有頑愎、善為化誨。如忿而疾之、是以頑濟頑。


2. 書き下し文

人の短所は、曲さに彌縫(びほう)を為すを要す。
もし暴きてこれを揚ぐれば、これ短を以て短を攻むるなり。
人に頑愎(がんぴく)あるときは、善く化誨(けいかい)を為すを要す。
もし忿りてこれを疾(にく)めば、これ頑を以て頑を済(す)むるなり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 人の短所は、曲さに彌縫を為すを要す。
     → 他人の短所や欠点は、柔らかく穏やかな態度でうまく補い、包み込むようにするのがよい。
  • もし暴きてこれを揚ぐれば、これ短を以て短を攻むるなり。
     → それをあからさまに暴いてさらけ出せば、短所に短所で応じるようなものであり、建設的ではない。
  • 人に頑愎あるときは、善く化誨を為すを要す。
     → 頑固で言うことを聞かない人には、上手に教え導くことが大切である。
  • もし忿りてこれを疾めば、これ頑を以て頑を済むるなり。
     → 怒りの感情で相手を憎めば、自分の頑固さで相手の頑固さに応じることになり、事態は悪化するばかりである。

4. 用語解説

  • 短處(たんしょ):短所、欠点、弱点。
  • 曲(きょく)さ:柔らかく、控えめで、婉曲な態度。
  • 彌縫(びほう):裂け目を縫い合わせるように、うまく補って整えること。
  • 暴而揚之(あばきてこれをあげる):あからさまに欠点を暴き、さらし者にすること。
  • 頑愎(がんぴく):頑固で道理に従わない性質。
  • 化誨(けいかい):教え諭して、改めさせること。
  • 忿(いか)りて疾(にく)む:怒って憎む、感情的に相手を否定する。
  • 以~濟~(もって~をす):~で~を済ませる、処理する。ここでは「相手と同じ手段で対抗する」の意味。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

他人の欠点には、柔らかく補い導くような態度が大切である。
もしそれをあからさまに暴いて責めれば、自分もまた短所をもって相手の短所に対抗するようなものである。
また、頑固な人に対しては、丁寧に教え導くように努めるべきであり、怒りに任せて憎んでしまえば、相手の頑固さに自分の頑固さを重ねてしまうことになる。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**他人の短所や未熟さにどう向き合うかという「対人関係の智慧」**を説いています。

  • 攻撃は関係を壊し、配慮と導きが信頼を築く
  • 欠点を暴くのは、本人を正すどころか「恥をかかせ、反発を招く」だけ
  • 頑固な相手には、怒りではなく粘り強く、敬意ある働きかけが必要

この章句は、感情的な対応ではなく、教育的・建設的な対処こそが人を活かすという大切な視点を与えてくれます。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「部下や同僚の欠点は、“あえて暴かず、補う姿勢”で」

弱点を会議や公の場で指摘すれば、プライドを傷つけるだけで信頼は失われる。
**本人の顔を立てつつ、さりげなく支援する“裏方の知恵”**が真の指導力。

● 「頑固なメンバーに感情でぶつかれば、組織は分裂する」

意見の食い違いや保守的な反発に対し、怒りで対応すれば対立を深めるだけ
対話・共感・傾聴を通じて、粘り強く導く姿勢が、組織の成長につながる。

● 「“短で短を攻む”は、リーダーの敗北」

感情的・断定的・攻撃的なフィードバックは、人を育てるどころか潰す
冷静かつ建設的な対処が、チーム全体の成熟度を高める。


8. ビジネス用の心得タイトル

「暴くより包む、怒るより導く──“育てる知恵”が信頼を築く」


この章句は、短所への対応が人格とリーダーシップの真価を問う場であることを教えています。
「欠点を見抜く眼」よりも、「欠点を包む度量」と「育てる知恵」が、信頼と成長を導きます。

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