信念を曲げて人に好かれるよりも、信念を貫いて嫌われたほうがよい。
善いことをしていないのに褒められるくらいなら、悪いことをしていないのに非難されるほうがまだましだ。
本当に大切なのは、他人の評価ではなく、自分の心の正しさ。
世間の顔色をうかがってばかりでは、やがて自分の軸を失ってしまう。
正道を行くことで一時的に人から嫌われたり誤解されたりしても、
長い目で見ればそれが真の信頼と尊敬につながっていく。
原文(ふりがな付き)
意(い)を曲(ま)げて人(ひと)をして喜(よろこ)ばしむるは、躬(み)を直(なお)くして人をして忌(い)ませるに若(し)かず。善(ぜん)無(な)くして人の誉(ほま)れを致(いた)すは、悪(あく)無くして人の毀(そし)りを致すに若かず。
注釈
- 意を曲げて:自分の信念や正しいと思う気持ちをねじ曲げること。
- 躬を直くして:自らの行いをまっすぐ、正しく保つこと。
- 忌ませる:疎まれたり嫌われたりすること。信念を貫くことで人から反感を買うこともある。
- 誉を致す:ほめられること、賞賛を受けること。
- 毀を致す:非難を受けること、誤解されること。
※『論語』の「郷原(きょうげん)は徳の賊なり」(陽貨第十七)では、他人に迎合する八方美人は、徳を損なう存在とされている。
『孟子』も同様に「郷原は徳の賊なり」とし、信念なき迎合を強く戒めている。
パーマリンク(英語スラッグ)
stand-by-principle
(信念を貫く)true-to-self
(自分に正直である)better-hated-than-hollow
(空虚に好かれるより、信念で嫌われよ)
この条文は、現代のSNS社会や対人関係における「評価疲れ」にも通じる深い示唆を与えます。
誰かの期待に応えるために自分を偽ることのむなしさを知り、
たとえ孤独でも、自らの信念と節を守って生きる尊さを教えてくれます。
1. 原文
曲意而人喜、不若直躬而人忌。
無善而致人譽、不若無惡而致人毀。
2. 書き下し文
意を曲げて人をして喜ばしむるは、躬(み)を直くして人をして忌ませるに若(し)かず。
善なくして人の誉れを致すは、悪なくして人の毀(そし)りを致すに若かず。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 意を曲げて人をして喜ばしむるは、躬を直くして人をして忌ませるに若かず。
→ 自分の考えを曲げて他人に気に入られるよりも、正直に振る舞って嫌われる方がよい。 - 善なくして人の誉れを致すは、悪なくして人の毀りを致すに若かず。
→ 実際に善いことをしていないのに人から褒められるより、悪いことをしていないのに非難される方がまだましだ。
4. 用語解説
- 曲意(きょくい):自分の本心や信念を曲げること。迎合・忖度。
- 直躬(ちょくきゅう):正直な行い、まっすぐな態度。
- 忌(い)む:嫌う、忌み嫌われる。
- 無善(むぜん):実際には善行がない状態。
- 致譽(ちよ):人からの称賛・ほめことばを得ること。
- 無惡(むあく):悪いことをしていない状態。
- 致毀(ちき):非難・中傷されること。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
自分の考えを曲げて人に好かれるより、正直に生きて嫌われる方が良い。
また、善いことをしていないのに褒められるより、悪いことをしていないのに非難される方がまだよい。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「外面の評判より内面の真実を重んじよ」**という強い倫理観を説いています。
- 第一句では、迎合や媚びによる人気獲得を否定し、真っすぐな行動の価値を支持。
- 第二句では、表面的な評価(誉れ・毀り)よりも、実質的な善悪(実際に行ったかどうか)を重視。
これは、**「見られる道徳」ではなく「本質の道徳」**の重要性を語る、現代にも通用する普遍的な倫理訓です。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
● 「忖度で信頼を得ても、本当の評価にはならない」
上司や顧客に気に入られるために本心を偽る行為は、短期的には評価されても長期的な信頼を損なうリスクがある。
むしろ、時に嫌われても「正直な姿勢」を貫くことで、真の信用が築かれる。
● 「賞賛されるより“善い行為をする”ことが先」
表面的に評価されるためのアピールばかりしていても、実質的な貢献が伴っていなければ虚しい。
評価されなくても、行動として善を積むことが人格と信頼を形づくる。
● 「非難されても、やるべきことをやっていればいい」
誤解や偏見によって批判されることはあっても、やましいことをしていなければそれでよい。
“毀誉褒貶に動じない軸”を持つことが、ブレないリーダーシップの要。
8. ビジネス用の心得タイトル
「誉れより誠、迎合より信念──真実の軸が信頼を築く」
この章句は、現代のビジネスにおいても非常に示唆に富む一節です。
SNS時代の「見せる倫理」ではなく、「見えない誠実さ」こそが、長期的な信頼と人格を支えます。
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