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位階に関係なく、人のために尽くす者こそ真の政治家である

たとえ地位や肩書きがない一般の人であっても、
日々徳を積み、人格を高め、他人に恵みを施し、尽くしているのであれば、
その人はすでに「無位の公相(こうしょう)」——
地位のない立派な政治家であると呼ぶにふさわしい。

反対に、大臣や高位高官のような身分のある者であっても、
ただ権力を私利私欲のために用い、恩を売って人の歓心を買おうとする者は、
どれほど高い官位についていようとも、
中身のない“有爵の乞人(きつじん)”——
名ばかりの物乞いにすぎない。

この教えの背景には、儒教の「修身斉家治国平天下(しゅうしん・せいか・ちこく・へいてんか)」という政治倫理観がある。
つまり、人を治めるには、まず己を正すことから始まるという思想である。


原文とふりがな付き引用

平民(へいみん)も肯(よろ)しうして徳(とく)を種(ま)き、恵(めぐ)みを施(ほどこ)さば、便(すなわ)ち是(こ)れ無位(むい)の公相(こうしょう)なり。
士夫(しふ)も徒(いたず)らに権(けん)を貪(むさぼ)り、寵(ちょう)を市(あきな)わば、竟(つい)に有爵(ゆうしゃく)の乞人(きつじん)となる。


注釈(簡潔に)

  • 平民(へいみん):地位や官職のない一般人。だが人格と行動によって政治的価値を持ち得る。
  • 徳を種え恵を施す:人格を磨き、他人のために尽くすこと。
  • 無位の公相(こうしょう):位はないが、大臣のように尊敬される人格者。事実上の政治的人物。
  • 士夫(しふ):地位ある高官や士大夫。
  • 寵を市る(あきなう):人に取り入って寵愛を得ようとすること。恩を売って人気を買うこと。
  • 有爵の乞人(ゆうしゃくのきつじん):爵位(地位)はあるが中身のない者。名ばかりの人物という皮肉。

パーマリンク案(英語スラッグ)

true-politics-starts-with-character
「真の政治は人格から始まる」という本条の核心を表したスラッグです。

その他の案:

  • no-rank-needed-to-serve
  • status-does-not-equal-worth
  • leaders-are-made-not-named

この章は、「立派な人間とは何か」という問いに、地位ではなく行為と内面で答えています。
現代社会においても、肩書きではなく、「誰のために、どう生きているか」が人の真価を決めるという視点は、
職場でも家庭でも変わらぬ普遍的なメッセージです。

1. 原文

民肯種德施惠、便是無位之公相。士夫徒貪權市寵、竟成有爵之乞人。


2. 書き下し文

平民(ひらたみ)も肯(よ)くして徳を種え、恵みを施さば、即ち是れ無位の公相(こうしょう)なり。
士夫(しふ)も徒(いたず)らに権を貪り、寵を市(あた)わば、竟(つい)に有爵(ゆうしゃく)の乞人(きつじん)と成る。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 平民も肯て徳を種え恵を施さば、便ち是れ無位の公相なり。
     → 一介の庶民であっても、自ら進んで徳を積み、人に恵みを施せば、それは官職がなくとも、立派な宰相(リーダー)に等しい。
  • 士夫も徒らに権を貪り寵を市らば、竟に有爵の乞人となる。
     → 反対に、立場ある士大夫が権力や寵愛をむさぼるだけであれば、たとえ爵位があっても中身は乞食と同じである。

4. 用語解説

  • 平民(ひらたみ)/民:一般庶民、身分の低い人々。
  • 種德(とくをうえる):徳を積む、善行を実行すること。
  • 施惠(しけい):人に恩恵を与える、施す。
  • 無位の公相(こうしょう):地位や役職はないが、徳によって宰相のような人物であるという意味。
  • 士夫(しふ):学識や地位を持つ知識人・官僚層。
  • 貪權(たんけん):権力をむさぼる。
  • 市寵(しちょう):寵愛(権力者の好意)を得ようと画策すること。
  • 有爵(ゆうしゃく):爵位・肩書きを持つ者。
  • 乞人(きつじん):乞食。ここでは人徳の欠如した者の比喩。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

たとえ役職や身分のない庶民であっても、進んで徳を育て人々に恩恵を与えるならば、その人は地位がなくとも立派な宰相に等しい。
一方、学識があり立場のある士大夫でも、ただ権力や寵愛を求めるだけならば、爵位があっても中身は乞食と同じである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「人の価値は地位ではなく、徳と行いによって決まる」**という基本的な倫理観を説いています。

  • 社会的地位や肩書きがなくとも、実際に人のために尽くす人こそが、真に尊い存在である。
  • 一方で、立場や学歴があっても、利己的な行動しか取らない人間は、むしろ卑しい存在である。

つまり、「内面の徳」と「実践的な善行」こそが人の価値を決定するのであり、
名刺や職位で人を見るな、行動で人を見よという教えとも言えます。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ タイトルや役職より「実際に人に貢献しているか」で評価すべき

  • 一社員でも、日々まわりを助け、良い影響を与えていれば、それはリーダーに等しい。
  • 逆に、部長や役員でも、社内政治や利己的行動にばかり走っていれば、組織にとっては害となる。

▪ 徳を持って動く人材が、組織の真の柱となる

  • 地位に関係なく、誠意ある行動、支援、感謝の心を忘れない人が、周囲に信頼され、自然にリーダーシップを発揮する。

▪ 組織文化として「役職でなく徳を見よ」を共有する

  • 年功序列や学歴ではなく、実際の行動と人間性を評価軸に据える文化が、健全な組織を育てる。

8. ビジネス用の心得タイトル

「役職より“行動と徳”──名刺の肩書きでは、人の価値は測れない」


この章句は、現代のマネジメントや人材評価にも通じる教えです。
地位や実績を語る前に、「自分は人に何を与えているか」「どれだけ徳を積んでいるか」を振り返ることが、
信頼される人間・組織への第一歩となります。


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