時代が安定している「治世(ちせい)」には、
正義や原則を明確にして、揺るがぬ信念で生きるのがふさわしい。
しかし、混乱した「乱世(らんせい)」においては、
無理に筋を通そうとせず、状況に応じて柔らかく身を処することも大切だ。
そして、現代のような“末世”――
価値観が混沌とし、何が正しく何が間違っているのかも曖昧な時代には、
「方(かた)=信念」と「円(まる)=柔軟さ」その両方を使い分けて、
臨機応変に対応していく知恵としなやかさが求められる。
また、人との接し方についても同じである。
善人には思いやりと寛容をもって接し、
悪人にはしっかりとした厳しさで対応すべき。
そして多くの一般の人々には、
時には寛大に、時には厳格に――
その人の状況や性質を見極めながら、バランスよく接することが大切だ。
「治世(ちせい)に処(しょ)しては宜(よろ)しく方(ほう)なるべく、
乱世(らんせい)に処しては宜しく円(えん)なるべく、
叔季(しゅくき)の世に処しては、当に方円(ほうえん)並(なら)び用(もち)うべし。
善人(ぜんにん)を待(ま)つには宜しく寛(かん)なるべく、
悪人(あくにん)を待つには宜しく厳(げん)なるべく、
庸衆(ようしゅう)の人を待つには、当に寛厳(かんげん)互(たが)いに存(そん)すべし。」
注釈:
- 方(ほう)…原則を守る、正義を貫く、角が立っても筋を通す態度。
- 円(えん)…角を立てず、柔らかく融通の利く態度。対人関係・社会の変化に応じた処し方。
- 叔季(しゅくき)…末世。混乱の時代や価値観が崩れている現代を指す。
- 寛厳(かんげん)…寛容と厳しさ。両方を場面に応じて適切に用いること。
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