人の心はうつろいやすく、人生の道は平坦ではない。
世間の航路には曲がりくねった険しさがあり、
必ずしもすんなり通れるとは限らない。
そうした「通れない」場面に出会ったときには、
無理に突き進もうとせず、自分の方から一歩退き、
相手に道を譲ることを学ぶべきである。
また、たとえスムーズに進める状況でも、
その道の三分くらいは譲る余裕を持つことが、
長く穏やかに世を渡るための秘訣である。
譲ることで失うのではない。譲ることで、かえって人生はうまくいくのだ。
「人情(にんじょう)は反復(はんぷく)し、世路(せいろ)は崎嶇(きく)たり。
行(い)き去(さ)られざる処(ところ)は、須(すべか)らく一歩(いっぽ)を退(しりぞ)くるの法(ほう)を知(し)るべし。
行き得(う)去(さ)る処は、務(つと)めて三分(さんぶん)を譲(ゆず)るの功(こう)を加(くわ)うべし。」
注釈:
- 人情は反復し(にんじょうははんぷくし)…人の心は定まらず、変わりやすい。情勢や感情は常に流動的である。
- 世路は崎嶇たり(せいろはきくたり)…世の中の道(人生)は、険しく曲がりくねっている。予想どおりに進まない。
- 行き去られざる処(いきさられざるところ)…前に進むことができない局面、行き詰まる場面。
- 一歩を退くるの法(いっぽをしりぞくのほう)…自らが一歩引いて場を収める術。柔軟で賢い対応。
- 三分を譲るの功(さんぶんをゆずるのこう)…進める場面であっても、少しは他人のために譲る心。円満な人間関係を築く知恵。
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