特別な偉業を成し遂げなくても、名誉や利益といった世俗の欲望を払い除けることができれば、
それだけで一流の人物に数えられる。
学問を深めるにあたり、特別に知識を増やさずとも、
世俗的な執着から自由になれれば、それはすでに聖人の境地である。
人の価値は、何を成したかよりも、何に惑わされなかったかによって測られる。
「人(ひと)と作(つく)りて甚(はなは)だの高遠(こうえん)の事業(じぎょう)無(な)きも、
俗情(ぞくじょう)を擺脱(はいだつ)し得(う)れば、便(すなわ)ち名流(めいりゅう)に入(い)る。
学(がく)を為(な)して甚の増益(ぞうえき)の功夫(こうふ)無きも、
物累(ぶつるい)を減除(げんじょ)し得れば、便ち聖境(せいきょう)に超(こ)ゆ。」
注釈:
- 人と作りて(ひととつくりて)…ごく普通の人として生まれ、特別な立場にいないこと。
- 擺脱(はいだつ)…ふり払う、断ち切る。俗情=名誉欲・物欲・執着などを断ち切ること。
- 名流(めいりゅう)…一流の人、立派な人とされる階層。
- 物累(ぶつるい)…名誉や富といった世俗の煩わしさや束縛。
- 聖境(せいきょう)…聖人の境地。悟りのように澄みきった精神状態。
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