子夏は、真に学問を好む人の姿勢について語った。
それは、日々新しいことを学び、月ごとに過去の学びを振り返って忘れないという態度である。
知識を積み上げるだけでなく、それを定着させ、身につけ続ける努力こそが、学を愛する者の証。
単に「新しいことを知る」のが学びではない。継続的な復習と実践によって、学びは自分のものになる。
「学ぶことを好む」とは、向上心を持ち、怠らず、継続して深める姿勢を意味するのだ。
原文と読み下し
子夏曰(い)わく、日に其(そ)の亡(な)き所を知(し)り、月(つき)に其(そ)の能(よ)くする所を忘(わす)るる無し。学(がく)を好(この)むと謂(い)うべきのみ。
意味と注釈
- 日にその亡き所を知り:
毎日、自分にまだ足りない知識や技術、新たな課題を見出して学ぶこと。 - 月にその能くする所を忘るる無し:
月ごとに、すでに身につけたことを振り返り、忘れないよう復習・確認すること。 - 学を好むと謂うべきのみ:
このように学びを日々更新し、過去の学びを忘れぬ者こそ、真の「学び好き」であるといえる。
1. 原文
子夏曰、日知其所亡、月無忘其所能、可謂好學也已矣。
2. 書き下し文
子夏(しか)曰(いわ)く、日(ひ)に其(そ)の亡(な)き所を知(し)り、月(つき)に其(そ)の能(よ)くする所を忘(わす)るる無し。学(がく)を好(この)むと謂(い)うべきのみ。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)
- 子夏曰く、日(ひ)にその亡き所を知り…
→ 子夏は言った。「毎日、自分の足りないところを知り、」 - 月にその能くする所を忘るる無し。
→ 毎月、自分ができるようになったことを忘れずに保持している。 - 学を好むと謂うべきのみ。
→ こういう人こそ、“学ぶことを本当に好む人”と呼ぶにふさわしい。
4. 用語解説
- 子夏(しか):孔子の高弟。冷静な論理的思考と、学びへの真摯さが特徴。
- 亡き所(なきところ):自分に欠けている点、知らないこと、未習得な部分。
- 能くする所(よくするところ):自分がすでに身につけた知識や技術。
- 忘るる無し:忘れないこと。復習や実践によって維持されている状態。
- 好学(こうがく):「学を好む」と書いて“学ぶことそのものを愛する”という意。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
子夏はこう言った:
「毎日、自分の知らないこと・できていないことを知り、
毎月、自分がすでにできるようになったことを忘れずに保ち続ける──
そういう人こそ、本当に学ぶことを愛している人だと言えるだろう。」
6. 解釈と現代的意義
この章句は、「本当に学びを愛する者」の姿を明確に描いています。
- 成長の基本姿勢は、“気づき”と“継続”の両立にある。
- 「知ること=新しい学び」だけでなく、「忘れないこと=継続的な練磨」も重要。
- 「学ぶとは何か?」を定義するような、非常に根源的かつ実践的なメッセージ。
「好学」とは、ただ新しい知識を得ることに喜びを感じるのではなく、
**「自らの不足に気づき、努力し、身につけたものを維持する」**という自己律的な学びのあり方を指しています。
7. ビジネスにおける解釈と適用
✅「現状把握と改善意識が、“学び続ける人”の条件」
日々の業務や会議、フィードバックの中で、自分に欠けている視点やスキルに気づき、反省することが第一歩。
✅「成果を“定着”させる姿勢が、真の学習者」
学んだこと・研修で得たことを「忘れない」「繰り返す」「実践する」ことで初めて、知識は力になる。
知識の取得だけで満足せず、それを維持・活用できてこそ成長。
✅「“学ぶ力”は採用や昇進の評価軸となる」
単なる頭の良さや瞬間的な成果よりも、継続的に学び、成果を積み上げられる人材こそが、組織にとって価値のある存在。
8. ビジネス用の心得タイトル
「学びとは、気づきと定着の両輪──“日々の不足”と“月々の蓄積”を忘れるな」
– 成長とは、ただ新しいことを知るだけでなく、それを忘れずに実践し続けること。好学の人材こそが、未来を切り開く。
この章句は、現代における“学習力”や“リスキリング”の重要性にも通じる、普遍的な学びの原理を語っています。
コメント