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見かけ倒しの人間は、内実のないこそ泥と同じ

孔子は、外見だけ立派に見えても、内面に徳が伴わない者を強く戒めた。
顔つきや態度が偉そうで、いかにも立派な人物のように振る舞っていても、
その実、心が弱く、卑怯であれば、そんな者は下層の盗人と変わらない――と語る。

たとえ高い地位にあり、身なりが整っていても、中身が伴わなければ虚飾でしかない
それは、他人に気づかれないように物を盗む「こそ泥」と同じように、
人の信を欺く存在であり、恥ずべきものである

この言葉には、「徳なき権威」に対する孔子の鋭い批判と、中身のある人間になることの重要性が込められている。


子(し)曰(のたま)わく、色厲(いろれい)しくして内(うち)荏(じん)なるは、諸(これ)を小人(しょうじん)に譬(たと)うれば、其(そ)れ猶(なお)穿窬(せんゆ)の盗(とう)のごときか。

現代語訳:
孔子は言った。「顔つきや態度が厳しく、立派に見えていても、内心が弱く卑怯な者は、
下層の者にたとえるなら、塀を越えたり壁に穴をあけて盗みを働くこそ泥のようなものだ」と。


注釈:

  • 色厲(いろれい):顔つきや態度が厳しく立派に見えること。威厳を装う様子。
  • 内荏(うちじん):内面が柔弱で、志や信念が伴っていない状態。
  • 小人(しょうじん):人格や志が小さく、利己的で徳を欠く者のこと。
  • 穿窬(せんゆ):穿=壁に穴を開けること、窬=塀を越えること。いずれも「こそ泥」=卑劣な盗人の手段を表す。
  • 盗(とう):盗人。ここでは地位を盗む者の隠喩でもある。

原文:

子曰、色厲而內荏、譬諸小人、其猶穿窬之盜也與。


書き下し文:

子(し)曰(い)わく、
「色(いろ)厲(はげ)しくして、内(うち)荏(やわ)らかなるは、諸(これ)を小人(しょうじん)に譬(たと)うれば、其(そ)れ猶(なお)穿窬(せんゆ)の盗(とう)のごときか。」


現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  • 孔子は言った。
  • 「見た目は厳しく強そうに振る舞っていながら、中身(内面)は弱々しい者を、小人(品性の劣った者)に例えるとすれば、それはまるで壁や垣根に穴を開けて侵入する泥棒のようなものである。」

用語解説:

  • 色厲(しきれい):顔つきや態度が威厳や厳しさを装っていること。外見だけ強く見せる。
  • 荏(じん/やわらか):柔弱、内面的に気力や勇気がないこと。内心の弱さ。
  • 小人(しょうじん):道徳的に未熟な者。私利私欲に走る人。
  • 穿窬(せんゆ):穴を穿ち、塀をくぐること。隠密に侵入する様子=卑劣な手段を使うこと。
  • 盗(とう):泥棒。正面から行かず、こっそりと悪事を働く者。

全体の現代語訳(まとめ):

孔子はこう言った:

「見た目だけ威厳があって、内心は弱々しい者というのは、
道義に反する小人物と同じだ。それはまるで、壁に穴を開けてこそこそ忍び込む泥棒のようなものである。」


解釈と現代的意義:

この章句は、「外見と内面の一致」の重要性、そして偽りの威厳や虚勢を戒める言葉です。

  • 人は中身が伴ってこそ、真の人格や信頼を得る。
  • 表面だけ厳しく振る舞う者は、かえって小人として軽蔑される。
  • 正々堂々とした人物でなければ、裏道を行く者(盗人)と同じである。

つまり、**「虚勢を張る人は、卑劣な手段に陥りやすい」**という教訓でもあります。


ビジネスにおける解釈と適用:

「見た目の強さより、内面の信念が問われる」

  • 高圧的な態度や威張った振る舞いは、一時的に通用しても、長期的には信頼を失う。
  • 本当に強い人とは、言動に芯があり、誠実さを伴う人

「虚勢を張るマネジメントは、組織を壊す」

  • 表面だけの厳格さでチームを押さえつける上司は、部下に恐怖を植えつけるだけで、尊敬されない。
  • 部下に“壁”を感じさせるリーダーは、やがて“穿窬の道”──裏口や逃げ道に頼る者を増やす。

「弱さを隠すな、強さを偽るな」

  • 内面の弱さを直視し、学び・支え合いで補えばよい。
  • 弱さを偽ることこそが、信頼と成長の最大の障害になる。

ビジネス用心得タイトル:

「虚勢は信頼を蝕む──“外強中弱”のリーダーは泥棒と同じ」


この章句は、現代のリーダーシップ・コミュニケーション・人間関係の本質にも通じる鋭い警句です。
“見せかけより誠実さ”、“恐怖より信頼”を重んじる組織文化を築くために、研修や行動指針づくりにも活用可能です。

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