—— 目指すところが違えば、共に歩むことはできない
孔子は、人間関係や協力関係の前提について、きっぱりとこう述べました。
「目指す“道(みち)”が違えば、互いに相談して物事を進めることなどできない」。
これは、表面的なやりとりや利害ではなく、
根本的な価値観・志・信条が合っていなければ、真の協力関係は成立しないという厳しい現実を語った言葉です。
「相手のやることに納得できない」「話し合っても噛み合わない」——
それは、そもそも大事にしている“道”が違っているからかもしれません。
孔子は、人間の調和や協力を「表面的な一致」ではなく、
**「深い価値観の一致」**に基づくべきだと考えたのです。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、道(みち)、同(おな)じからざれば、相(あい)為(ため)に謀(はか)らず」
注釈
- 「道」:人生の目的、価値観、生き方、信念。孔子思想においては非常に重い意味をもつ。
- 「謀る(はかる)」:相談し、計画し、共に事を成すこと。
- 「相為に謀らず」:互いに力を合わせて物事を進めることができない。志が異なると協力は成立しない。
パーマリンク候補(英語スラッグ)
no-common-way-no-common-plan
(志違えば計画も立たず)shared-values-enable-cooperation
(価値観の一致が協力を生む)cannot-build-without-alignment
(理念が違えば築けない)
この心得は、現代のビジネスパートナーシップ・政治対話・人間関係においても重要な指針です。
共に何かを成そうとする前に、本当に目指す方向は同じか?
それを見極めることが、長期的な信頼と成功への鍵となります。
1. 原文
子曰、道不同、不相為謀。
2. 書き下し文
子(し)曰(いわ)く、道(みち)同じからざれば、相(あい)為(ため)に謀(はか)らず。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 「道同じからざれば」
→ 人としての価値観・信念・考え方が異なるのであれば、 - 「相為に謀らず」
→ お互いに共に事を謀る(=協力して何かを企てる)ことはできない。
4. 用語解説
- 道(みち):ここでは「信念」「人生観」「倫理観」「行動の原理」などを指す。孔子にとっての“道”は、正義・礼節・仁義に基づいた価値観。
- 為に謀る(ためにはかる):計画を立てる・一緒に物事を行う・相談し合うという意味。
- 相為に謀らず:互いに協力・相談しない。相容れない関係を示す表現。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう言った:
「もし価値観や信念が根本的に異なるのであれば、
お互いに協力して何かを成し遂げることはできない」。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「価値観の一致の重要性」と「人間関係における限界と見極め」**を説いたものです。
- 単なる意見の相違ではなく、根本的な人生観・倫理観・目的のズレがある場合、
それ以上の協力関係や共同行動は難しいという現実的な見解。 - 孔子は「仁・義・礼・智」に基づく“道”を信じる者であり、
それに反する価値観の者とは「交わらない」という、厳しさと潔さを併せ持つ判断を下しています。
7. ビジネスにおける解釈と適用
◆ 「価値観が一致しなければ、真の協業は成立しない」
ミッション・ビジョンが合わない企業・チーム・個人とは、
どれだけスキルがあっても長期的な協力関係は築けない。
◆ 「信念のズレは戦略の破綻を生む」
プロジェクトメンバー同士で“やるべきこと”への根本的な考えが違えば、
方針も優先順位も合わず、結局何も進まない。
◆ 「早期の見極めが摩擦を防ぐ」
共通の目的や理念を共有できるかどうかを、初期段階で明確にすることが、無駄な摩擦や疲弊を避ける鍵。
◆ 「退く判断も、知者の選択」
意見の対立を“調整”ではなく“道の違い”と見抜いたときには、
無理に交わらず、潔く道を分けることも組織の健全性を守る選択。
8. ビジネス用心得タイトル
「道を違えたら、潔く離れよ──“価値観の一致”こそ協業の土台」
この章句は、現代においてもパートナーシップ・チームビルディング・経営判断・人間関係に通じる鋭い指針を与えます。
「どんなに能力が高くても、“方向性が合わない人”とは組むべきではない」という、
関係性の選択眼と判断軸を持つための言葉です。
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