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軽々しく人をそしったり、ほめたりしない

—— 評価は慎重に、背景と本質を見よ

孔子は、人を評価することの難しさと慎重さについてこう語った。

私は軽々しく誰かをそしったり、ほめたりはしない。
もし誰かをほめることがあるとすれば、それは実際にその行いを見て、試されたものである。
なぜなら、今の人々も、昔の三代(夏・殷・周)の人々と同じく、
本来は道をまっすぐに歩む徳性を持っているはずだからだ」と。

つまり、人は環境や時代によって歪むことがあっても、本質的には変わらぬ可能性を持っている。
だからこそ、評価は行動を見たうえでなされるべきであり、
ただの噂や印象で人を判断してはならない
という戒めである。

この心得は、現代の人事評価・教育・リーダーシップにおいても非常に重要です。
感情や印象に左右されず、行動と背景に目を向けることが、人を正しく理解し、育てる第一歩となります。

目次

原文

子曰、吾之於人也、誰毀誰譽。
如有譽者、其有試矣。
斯民也、三代之所以直道而行也。

書き下し文

子(し)曰(いわ)く、吾(われ)の人(ひと)に於(お)けるや、誰(たれ)をか毀(そし)り、誰をか譽(ほ)めん。
如(も)し譽(ほ)むる所の者有(あ)らば、其(そ)れ試(こころ)みし所有るなり。
斯(こ)の民(たみ)や、三代(さんだい)の直道(ちょくどう)にして行(おこな)いし所以(ゆえん)なり。

現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 「子曰く、吾の人に於けるや、誰をか毀り誰をか誉めん」
     → 孔子は言った:「私は人をむやみにけなしたり、ほめたりすることはない」。
  • 「如し誉むる所ある者あらば、其れ試みし所有るなり」
     → 「もし私が誰かをほめることがあるとすれば、それはその人を実際に試し、確認した結果なのだ」。
  • 「斯の民や、三代の直道にして行いし所以なり」
     → 「この民(人々)は、かつての三代(夏・殷・周)の時代に、まっすぐな道をもって行動していたのだ(今もそうであってほしい)」。

用語解説

  • 毀(そしる):非難する。批判する。悪く言う。
  • 譽(ほめる):称賛する。良い評価を与える。
  • 試(こころみ)し:試して確かめること。言葉ではなく実践による確認。
  • 斯民(しみん):この民、この国の人々(しばしば一般庶民を指す)。
  • 三代(さんだい):古代中国の理想的な王朝である夏・殷・周の三時代。孔子が理想とする政治・社会秩序の基準。
  • 直道(ちょくどう):まっすぐな道理。正義や倫理にかなった行動基準。
  • 所以(ゆえん):〜である理由、原因。〜することのできたわけ。

全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう言った:

「私は人をむやみにほめたり非難したりはしない。
もし誰かをほめることがあるとすれば、それは実際にその人物を試して、確かめたうえでのことだ。
そもそも、この民(人々)は、古代三代の時代において、まっすぐな道をもって行動していたのだ。
私はその理想を信じている」。

解釈と現代的意義

この章句は、「評価には実践が必要である」こと、そして「人をまっすぐに信じる理想」を同時に語る、孔子のバランスの取れた人間観を表しています。

  • 人を評価するときには、言葉や印象ではなく、実際の行動・試練・実績を見て判断するべきだという、非常に実践的な態度。
  • 同時に、「人間は本来、直道=正しい道を歩む力を持っている」という、人間に対する深い信頼と理想主義も込められている。
  • 評価の慎重さと、信頼の尊さ。その両立が君子=理想的リーダーのあるべき姿として描かれている。

ビジネスにおける解釈と適用

◆ 「人の評価は“実際に見て、試して、確かめてから”」

面接や印象・口の上手さだけで人を評価してしまうのではなく、行動・業務遂行・困難への対応など、現場での“試し”を通じて判断すべき

◆ 「軽々しく称賛も非難もしない組織風土を」

表面的な言動だけで人を断じることは、誤解・偏見・不公正な人事を生む。本当の実力と人格を見抜くには、慎重な姿勢が必要。

◆ 「“直道”の精神が長期的信頼を生む」

まっすぐな道理をもって生きる人材は、短期的に目立たなくとも、長く信頼され、組織の核になる。その価値を見抜く力がリーダーに求められる。

◆ 「評価基準を“実証主義”と“信念”の両軸で」

数値化された実績だけでなく、「困難の中でどう動いたか」「人としてどう振る舞ったか」も含めて、総合的に人物を評価する基準づくりが重要

まとめ

「試して見て、まっすぐに信じよ──評価の慎重さと信頼の理想」

この章句は、人をどう見るか、どう信じるか、どう評価するかというあらゆる場面に応用できる「人間観と評価観の基本」を教えてくれます。

リーダー研修・人事評価制度の見直し・面接官教育・組織文化形成などにおいて極めて有効です。

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